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新・農業経営者ルポ

コシヒカリからの脱却の先に全国一のコメ45品種

茨城県筑西市で45品種ものコメを作っている農業法人がある。大嶋康司さん(58)が経営する(株)大嶋農場だ。品種の用途別内訳を見ると、主食用や酒造用、さらには飼料用や観賞用の種子などと幅広い。約20年前までは周囲の農家と同じように作るのはコシヒカリだけだった。それがなぜ用途別に多数の品種を栽培するに至ったのか。 文・撮影/窪田新之助、写真提供/(株)大嶋農場
大嶋農場はコメを個人や米屋、百貨店などに出荷している。
さらに、農林水産省系の農研機構などの育成者から利用許諾を受け、原種を仕入れて自社の圃場で種子を作って全国の農家に供給している。過去3年間に一度でも注文した客にはDMを送っており、その数は直近で1300戸に達する。種子の生産から販売までを一括で請け負う会社としてはおそらく全国一の規模だろう。
社長の大嶋さんと知り合うきっかけを作ってくれたのはJA全農いばらきのSさんになる。2017年8月だったか、筆者が日本パエリア協会のNさんから「加盟店がパエリアに向く国産米を探しているんだけど、どこか作っている農家を知らないかな」という問い合わせをもらっていたので、農業界で顔の広いSさんに相談したところ、紹介してくれた相手が大嶋さんだった。
しばらくしてSさんとNさんと一緒に筑西市にある大嶋農場の事務所にうかがうと、大嶋さんがパエリア用に見せてくれたのは「和(なご)みリゾット」という品種だった。このとき、大嶋さんが45もの品種を作ると話すから驚いた。興味を持ったので改めて取材することにした。

カレーやリゾット、観賞に向く品種も

大嶋さんはコシヒカリや大粒の「いのちの壱」のほか、「和みリゾット」など特定の料理に合わせた品種も手がけている。たとえば、米粒の表層の粘りが少なく、カレールウになじみやすい、その名も「華麗舞(かれいまい)」。炊飯米の粘りが強すぎず、酢になじんでほぐれやすい寿司向けの「笑みの絆」。45品種のうち、これらも含め28品種は農研機構が育成した品種である。

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