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この話は大嶋さんが自分で種子の生産を始めた理由とも大いに関係している。国内にある種子の販売会社は自ら種子を生産しているわけではなく、契約農家に委託しているものだ。だから、農家が欲しい「感覚」の部分はまるで伝えられない。それでは種子を購入する農家を安心させることも満足させることもできない。大嶋さんは種子の販売会社と付き合う中、反面教師としてそれを学んできたのだ。
除草にチェーンや
歩行型機械、冬期湛水
大嶋農場の栽培方法についても少し触れておこう。経営面積25 haのうち、9haは有機JAS規格、16 haは県の特別栽培米認証制度で認証されている。有機稲作で農薬を減らすとなると、最も厄介なのは除草だろう。
対策は主に四つある。いわゆる「チェーン除草」だ。これは鉄パイプにチェーンをのれん状にぶら下げるもので、田植え後10日目から最大2回、田んぼで引っ張る。すると、雑草の幼芽を浮遊させたり、逆に埋没させたりするほか、田面の水を濁らせて光合成を阻害することで、草の発生を抑制できる。
対策の二つ目はエンジン付きで手押し式の歩行型除草機だ。田植え後2週間から6月末まで複数回、株間を除草するこの機械を走らせる。しかも、田植えをした方向だけではなく、それと交差するように横方向からもこの機械を入れる。そのために移植の密度は坪37株にして、30cm間隔で碁盤目状に植えている。
ヒエについては、以上の対策をしても生えてきたら、最後には手で抜いていく。また、同じ目的で冬場は湛水状態にする。
土づくりはどうなのか。大嶋農場はブロイラーを年間8万羽飼っている。その鶏糞を発酵させ、すべて堆肥として使う。鶏糞に混ぜるのは、海と山、田から取れたものだ。
海はかきがらやにがり、田は米ぬかやもみがら、山は落ち葉。ただ、落ち葉は2011年の東日本大震災による原発事故以降は使っていない。
コメの可能性を広げたい
来年には政府が言うところの生産調整の「見直し」を迎え、稲作の経営者や産地は大きな転換期を迎えるとされている。そんな中、大嶋農場はこれからどこへ向かうのか。
「コメは原料と思われているけど、その前後のことに力を入れていきたい。前というのは、たとえばすでにやっている種子の生産。後というのは加工とかイベントを開くとか。要はコメの可能性を広げていきたい」
じつは取材で訪れた日も、大嶋さんは仕事の関係者らを招き、自身が作る「和みリゾット」でパエリアを作って食べるイベントを開いていた。調理したのは、2017年の国際パエリア・コンクールのインターナショナル部門で優勝した川口勇樹氏だ。さらに、大嶋さんがパエリアの材料として飼っているブロイラーをその場で絞めることもあって、大勢が集まってにぎわいを見せた。
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大嶋康司 オオシマヤスジ
社長
(株)大嶋農場
1959年、茨城県協和町(現・筑西市)生まれ。東京農業大学畜産学科を卒業後、実家で農業を始める。経営移譲は2000年。水田の経営面積は25ha。そのうち、JAS有機の認証が9ha、県の特別栽培の認証が16ha、ほかに大嶋農場の栽培基準を遵守する農家との契約栽培が20ha。ブロイラーを年間8万羽飼育する。
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