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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

各国で異なるTHC濃度の基準

産業用ヘンプは世界中で栽培面積が拡大し、さまざまな分野で利用が拡大している。本誌2017年10月号の特集で概要を取り上げたが、各国の取り組みはさまざまである。第二次世界大戦後に化学繊維の普及と生活様式の変化から布やロープなどかつての需要先が消滅した。本連載では、そのなかで各国が規制突破と需要開拓のためにどのような試行錯誤をしたのかを紹介していく。

ヘンプに「産業用」を付けた理由

まず麻だが、この植物を語るときには用語の定義が重要である。植物全体を指すときには大麻草(Cannabis)を用いるが、布やロープ等の産業用はヘンプ(Hemp)を、嗜好用はマリファナ(Marijuana)と使い分けている。マリファナは、米国で19世紀から20世紀初頭にメキシコから大麻草をタバコのように喫煙する風習が伝わったときに俗語として広まった。ヘンプとマリファナは本来、混同されないはずである。それなのに、なぜ産業用ヘンプ(Industrial hemp)と呼ばれるようになったのか?
その答えは大麻規制の歴史にある。最初に国際規制を受けた1925年の第二あへん条約では、その対象は“印度大麻草”(後に薬用型に分類される大麻草のこと)で、ヘンプではなかった。しかし、61年の麻薬に関する単一条約では、品種や名称を問わず大麻植物であればすべてが規制対象となり、「産業上及び園芸上の目的の栽培」に限って規制対象外と定められた。後から考えると、このとき規制対象が栽培目的によって限定されたことが産業用ヘンプにとって不幸な出来事となる。というのも、大麻草に含まれている向精神作用を持つ化合物、THC(テトラヒドロカンナビノール)が分離・同定されたのが64年で、THCの作用を打ち消す化合物、CBD(カンナビジオール)の分離・同定も63年と、いずれも条約制定の数年後だったからだ。化学成分の含有比率によって品種タイプを区別しようという動きは、新たな研究が進み、分析技術が確立されてからのことである。

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