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特集

コメを神棚から降ろせ



深刻化する
コメ需給クライシス

飼料米奨励は食料自給率向上を隠れ蓑にした減反政策の一環だった。特効薬まがいの投与によってもたらされた副作用、コメ不足パニック。数十年にわたる失敗の教訓は、いまだに生かされていない。本誌連載「土門辛聞」でおなじみの土門剛氏に「30年産問題」に切り込んでいただいた。
(編集部)

土門 剛
(農業ジャーナリスト)

こんな皮肉なことはない。減反見直しの「平成30年産問題」を目前に控えて、同29年産の主食用米が深刻な不足に陥ってしまったことだ。減反のために飼料米奨励策にドライブをかけたことが、パニックを引き起こしたのだ。
コメ不足パニックに輪をかけたのが、農水省統計部が公表する作況指数。12月5日公表は平年作を示す100。マーケットでこの数字を信用するものは素人だけ。現場の実感からすると、95を割り込んでいたはず。それを前提にすれば、数量ベースで40万t程度の供給ショートが起きているはずだ。
農水省にはすでに備蓄米放出を求めるコメ関連業界への陳情が相次いでいるのだが、備蓄米放出にはルールがある。不作により生産量が減少した場合、食料・農業・農村政策審議会食糧部会が価格や在庫などを総合的に検討して大臣が判断することになっている。平年作で消費が増えたということもないので発動はないと見るのが常識だ。

【減反・飼料米政策のツケが回ってきた】

今回のコメ不足パニックは、いくつかの要因が重なった。天候に恵まれなかったこと、高齢化に伴う農家の栽培技術の低下があって、決定打は飼料米生産の奨励だった。高額の助成金を付けるから、農家は飼料米の生産に走ったのだ。
飼料米の生産にドライブがかかったのは、2015年3月に決まった食料・農業・農村基本計画だ。10年後の25年に、飼料米を110万tに大増産することが盛り込まれていた。国産飼料の増産は、食料自給率の向上につながるというのが大義名分だったが、主食用米の生産を減らすことが目的だった。そのため主食用米を生産したときとほぼ同一価格になるような高額助成をつけた。
高額助成の根拠とした食料自給率の向上はすぐに崩れてしまう。その根拠につながる主食用相対価格(全銘柄)」の数字を掲げておいた。その結論は、飼料米を増産すると、主食用米の値上がりを招き、マーケットでの消費減退を誘発して、その生産量が減るという相関関係のことである。
飼料米生産への高額助成金は15年産から始まった。主食用相対価格は、ものの見事に1俵(60kg、玄米)につき、毎年1000円ずつアップする高騰ぶり。ところが、その反動で主食用米の生産量が減っていく。17年産の生産量は、高額助成金導入前の14年産に比べて、57万6000tも減っている。国が食料自給率の向上につながると約束した飼料米は、その間、29万6000tしか増えていない。加工米などを含めた非主食用米全体での比較でも30万7000tの増加。主食用、非主食用のトータルでの比較では、26万9000tも生産量が減っている。

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