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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

経営の寿命を延ばす策を探す


とくに労働日誌は何を誰が行なったかが記載され、その後の作業における経験が記録となって残るのだから、貴重な情報といえよう。多くの経営者にとって簿記や財務諸表が節税対策に充てるだけであるように、労働日誌が形式的に整理されるだけで労働基準監督署とのやりとり以外に出番がなければ、宝の持ち腐れであろう。
私の経営では簿記、作業日誌、給与台帳と日頃の経営に必要な帳簿に加え、トラクターや社用車の車両管理簿、備品管理簿で使用時間、距離、各生産資材の在庫を、責任者を決めて管理している。まだ過去の記録を経営改善に効率よく使う段階にまでは至っていないが、将来に向けた備えだと心得ている。人間の記憶は曖昧なもので、当てにならないことも多い。帳簿や記録などの確かな数字があれば、的を射た経営分析となり、経営改善策も功を奏すものとなるはずである。

長寿命社会の今後を見据えて

会社経営に焦点を当てて今年のテーマを考えてきたが、長寿命なのは会社だけではない。日本人もまた長寿命化しているのだ。
その理由の一つに、世界的にも独特といわれる日本人のライフスタイルがある。食事や入浴などの暮らし方は、長い年月を経て、江戸時代に確立したと私は考えている。食の欧米化が指摘される現代においても、日本人の食生活は海外の国々と比べて、脂肪摂取量が飛び抜けて少なく、米飯を中心とした炭水化物、魚介類の摂取が多く、豆腐や納豆、味噌などの大豆製品に加えて、発酵食品の摂取も多い。こうした食生活は欧米でも賞賛され、国境を越えて健康に関心を寄せる人々が日本食を取り入れていると聞く。
もう一つの理由は遺伝形質に一説があるようだ。黄色人種(モンゴロイド)は氷河期に、ベーリング海峡を渡って新大陸に移り住み、上手に定住した。日本人はモンスーン気候に順応し、極寒圏に住むイヌイットは寒さに耐え、アマゾンの熱帯雨林地帯に住むインディオは、暑さに耐えて進化を続けてきた。環境適応力の高さも長寿の証であろう。
我々経営者は替わりの利かない職業である。経営も自身の身体も不調になるわけにはいかない。経営で培った技術や哲学、道徳を押さえつつ、新たな技は速やかに体得する。これが現代を長く健康に過ごすコツではないだろうか。過剰な機械や施設への投資は、人間の過剰な脂肪摂取に似ている。気候風土に逆らっても適応できず、定住が難しくなるのも同様の考えであろう。加えて、人も会社も社会保障制度に頼りきるだけでは健康を維持できないのは、皆さまもご承知のことであろう。自身で状態を把握し、改善を施した上で利用するほうが健康的な発想である。経営の寿命を延ばす策を今年の連載で探していきたい。

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