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ほどなく農業環境対策課から補助金を出していると連絡があった。2015年度事業の産地活性化総合対策事業の「輸出用GAP等普及推進事業(全国推進事業)」。ただ交付先は、推進機構ではなく協議会の方だった。応募期間が15年2月20日~3月12日。推進機構の設立が、その4カ月後だったので協議会で応募したようだ。交付決定は同年7月7日。農水省への成果物の納入期限は、それから1年以内という条件だった。
11月29日、農業環境対策課を訪ね、成果物を確認してきた。筆者が要求していたGLOBALG.A.P.の基準文書の翻訳版白黒コピーが、課長席の前のテーブルに2部用意されていた。日本語訳の「総合農場認証 全農場基本 ? 農作物基本 ? 青果物」と「総合農場認証 全農場基本 ? 農作物基本 ?コンバイン作物」。
その表紙を見ただけで、思わず大阪弁で「これ、あかん。アウトや」とつぶやいてしまった。協議会や推進機構が翻訳したものではないと見抜いたのだ。筆者の指摘に、課長の顔が一瞬こわばった。その場で課長にはこう説明しておいた。
「これらはどちらも他人が翻訳したものを表紙も貼り替えずに、そのまま成果物として提出したという疑いがある。根拠は、GLOBALG.A.P.を審査する外資系の審査会社が同じものを翻訳していて、それと瓜二つということだ。よく調べて欲しい」
他人の翻訳をぬけぬけと
成果物として提出
翌日、及川課長に電話をかけて調査の方法をアドバイスしておいた。
「GLOBALG.A.P.の基準文書は、国内にある認証会社が翻訳している。その認証を受ける生産者や流通業者へ提供する義務があるので、新しいバージョンが出るたびに翻訳している。農水省との間では第5版0?1をGAP翻訳することになっていた。この版はグローバルGAP事務局から15年2月に公表されている。補助金の交付決定(15年7月)があったときには、すでに認証会社が翻訳して認証を受ける生産者や流通業者へ提供していたと思われる。その認証会社と密接な関係がある今瀧氏は、いつでも入手可能のはずだ。
今瀧氏が翻訳したかどうかは、その前のバージョンとなる第4版、その後に公表された第5版0?2を比較してみることだ。それらの版には、表紙以外のすべてのページに、翻訳者と校正者の名前が明記してあるのに、第5版0?1にはその記載がない。
さらに不思議なことは、第4版の翻訳は、国内に拠点を置くGLOBALG.A.P.の審査会社4社が共同で手がけていたのに、なぜか第5版0?1を翻訳したのは、ドイツの認証会社で日本法人のテュフズードジャパン株式会社だった。ちなみに第4版の翻訳を手がけた残りの3社は、スイス系SGSジャパン、オランダ系コントロールユニオンジャパン、英国系インターテック・サーティフィケーションだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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