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新・農業経営者ルポ

買うならコンバインより製粉機


「これなら自分でもできるんじゃないか」
旅行から戻った渡邊は、さっそくJAの婦人部に呼びかけ、イチゴの規格外品でジャムを試作して直売所で売り始めた。すると面白いように売れていく。やがて規格外品だけでは足りなくなり、青果として出荷するはずだったイチゴでもジャムをこしらえると、これがずっとおいしい。結果、JAの部会ではイチゴジャムが人気商品になった。
そんな矢先、認定農家が大豆や麦を転作したら、助成金を支払う制度が始まる。すると集落の農家たちが渡邊に声をかけてきた。大豆や麦の転作をやらないかと言うのだ。渡邊は乗り気ではなかったが、あいにく集落には認定農家は彼しかいなかった。しぶしぶ話に乗ることにした。
案に反して、大豆や麦を作り始めて良かったと思った。小麦や大豆は加
工して売る「商品化農業」を実践するのにうってつけだと気づいたからだ。とりわけ大豆は豆腐や豆乳、きな粉など用途は幅広い。そこで大豆製品の加工に取りかかることにした。
数ある加工品の中で選んだのは豆腐。勉強のため豆腐屋20社を訪ねた。それこそ1丁1000円するような豆腐も試してみた。だが、自分が思い描いている味とはどこか違う。そんな中、広島県でたまたま通りかかった1軒の舌触りや風味にハッとする。かつて渡邊の家の近所にあり、多くの人が親しんだ「豆腐らしい」味がそこにあった。
では、それ以外の店の豆腐と何が違ったのか。「どこの豆腐屋も国産大豆で作った豆腐とうたっているけど、店の裏に行ってみたら、アメリカ産の大豆の袋が置いてあった。中を見れば、汚れていてひどい品質の豆が入っていた。ときには汁が出ているものも。おまけに澄まし粉(硫酸カルシウム)を使っているから、昔の味にはならないよね」

生産機械ばかりではなく、
販売機械を買え

こうした経験を踏まえ、渡邊は講演に呼ばれると、最後は同じ締めくくりの言葉を用意している。生産機械ばかり買うのではなく、販売機械も買え――、と。「田植機やコンバインをいたずらに増やすよりも、精米所を造ったり、製粉機を買ったりすればいい」
コメにしても需要はあるものの、あえて自ら作る面積を増やすことをしないのは、この文脈にある。自社の面積で足りない分は信頼の置ける農家から仕入れて販売している。それが年間500袋に及ぶ。
「田植機やコンバインなんか機械ばかり増やしても貧乏になるだけでしょ」
だから大型機械は55馬力のトラクター2台とコンバインが1台あるだけだ。地域には機械の共同利用組合があるから、田植機や足りないコンバインはそこから借りている。

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