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新・農業経営者ルポ

買うならコンバインより製粉機


営業力については高校卒業後の4年半にわたるサラリーマン生活が活かされているという。「大学に行くのに失敗して就職したんだけど、営業として客と話せる力を教えてもらった。その経験は大きいよね」
熊本・八代の池松からは商品化農業を志向すること、さらにそのためにアイデアをカタチにする大切さを教わった。その教えを忠実に遂行してきた渡邊も64歳。息子への経営移譲は間近に迫っている。気がかりは二つある。一つは借金。豆腐の製造と販売をする場所を設けるため、土地を買って上物を建てた。ただ、返済のめどは立っている。「だからこの点はあまり心配していない。あとは息子がつくる世界。努力次第だし、自分の力をつけるには、おやじとは違うことをしてもらいたい」
もう一つの心配は農地がいつまで借りられるかということ。自作地はわずかで、ほとんどは借地である。商品化農業を目指すといっても、農地がなければ原料を作れない。
「自分で生産する原料だからこそ、自信を持って加工品を作り、売ることができる。もし原料が作れず、買い付けするとなれば、いまとはまったく違う世界になる。それだけは避けたい」

イチゴの育種という夢

以上のような話を聞いて退席しようとすると、「一つだけかまわん??本当はあなたが聞く話なんだけど、まだ話していないことがあるんよ。僕の夢だよ」と切り出してきた。失礼ながら、てっきり渡邊は第一線から引退するのかと思っていたのだ。
渡邊の夢、それはイチゴの品種をつくること。品種名はずばり「渡邊邦廣」。どんな特徴を持った品種を狙っているのかと問えば、「なかなか表現しにくいけど、ぱっと見たときに輝いているものかな。いまある品種で一番気に入っているのは福岡県の糸島の直売所に出ている。若い農家が自分で育種したもので、すごく立派な姿をしている。味は「あまおう」より酸っぱいけど、あれがイチゴ本来の味だよね。あれだけの品種は難しいかもしれないけど、少しでも近いものを作りたい」
すでに海外から有望な系統の苗を集めて交配させているところで、一つだけ有望な系統ができ上がったそうだ。経営移譲をする1年後、サラリーマンに生産農家を経てきた渡邊は次なるステップを踏み出す。(文中敬称略)

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