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特集

ゲノム編集 育種新時代への備え

現在、世界中で新たな育種技術としてゲノム編集技術が脚光を浴び、日本においても、近年次々と研究成果が挙げられている。一方、遺伝子組換えと同じような議論も生まれてきた。新しいものが世に出て人の役に立つのは、開発する側の技術「シーズ」と、使う側の潜在的な「ニーズ」が結びついたときだ。育種技術が進化するほど、生産者はこれからの農業にどんな作物が必要なのか発信する立場になるだろう。今回は、ゲノム編集をはじめとする技術を踏まえたうえで、農業において育種をどう捉えるべきか専門家や生産者の意見を特集した。 (取材・構成/平井ゆか)

Part1
ゲノム編集の基礎知識

【ゲノム編集の特徴】
解説●冨田房男氏 北海道大学名誉教授

ゲノム編集は、DNAの狙った場所を変異させる技術。ヌクレアーゼ核酸分解酵素によって、DNAの一部を切り取って、ある性質を消し去ることばかり注目されがちだが、切り取った後に、塩基配列を変えたものを入れ込むこともでき、ある性質を強くしたり弱くしたりすることもできる。
大きな特徴は、CRISPR/Cas9などのヌクレアーゼによって、狙う確率が非常に正確になったということである。ただし、確率は100%ではないので、検証は必要である。
原理は突然変異育種と同じである。ただし、放射線照射や化学物質による突然変異育種では、特定の場所を狙い撃ちできないため、後から目標とする特性に近いものを拾ってくるという方法である。

塩基配列に加え
遺伝子情報の解読も必要

ヌクレアーゼで狙い撃ちするには、塩基配列の解読が必要である。加えて、ある塩基配列がどういう働きをしているのか分かって初めて、狙い撃ちすることができる。つまり、塩基配列に加え、あらかじめ遺伝子情報の解読をしておくことが必要だ。
たとえばイネはすべての塩基配列が解読されているが、どこがどんな働きをしているかというのは、すべては解読されていない。徐々に解読されているので、分かっているところは狙い撃ちすることができる。

遺伝子組換えとの違いは
異種遺伝子を入れないこと

ゲノム編集は、その個体の中で自分の遺伝子を変化させるので、異種の遺伝子を入れない。一方、遺伝子組換えは、自分の中の遺伝子を変えたものを取り入れることもできるが、異種を入れることが多い。

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