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特集

ゲノム編集 育種新時代への備え


米国では、ラウンドアップ耐性作物が90%以上のシェアがあっても、大豆の種子会社が200社ぐらいあり、品種は2000ぐらいあります。つまりラウンドアップ耐性の技術による利益をみんなが享受しているということです。

誰が技術を開発して、誰が使い、誰が生産するのか、ライセンス契約がきちんとしていて、津々浦々使われるようになれば、みんながウィンウィンの関係になることができます。

ゲノム編集の場合、大学が開発した技術を企業が使わせてもらうというのと同じです。大学や研究所や民間企業が切磋琢磨して開発したアイデアを、みんなが使えるようにするのが大事なことです。

----誰でも使えるようにするために、何か課題はありますか。
山根 安全性評価の規制が厳しいと、消費者に安心感を与えますが、厳しすぎると中小企業が入りにくい産業になります。規制に対応するための研究や膨大なデータ集積ができる大企業しか育種できないからです。大企業しかできない安全性評価を課していては技術が育種家のものになったとは言えません。
ゲノム編集も、遺伝子組換えと同じよう規制がかかれば、中小の種苗会社が入ることができなくなるでしょう。私は、それが本当に正しいのかどうか検討する必要があると思います。農業生産者や消費者のニーズをわかっている中小の種子企業がゲノム編集を使えるようにして、効率よく農業生産者と消費者が必要な品種を提供していくことが大切だと思います。

----4月から主要農作物種子法が廃止されますが、国が穀物を管理してきたので、とくにコメの民間育種は少ないのが現状です。民間で新しい技術を使った穀物の育種をしていくための課題はありますか。
山根 穀物の育種は、これまで国や県がお金をかけて、毎年品種を出してきましたが、それらはあまり普及していません。民間は売れないものはつくれません。野菜は民間育種でしたから、タキイ種苗さんやサカタのタネさんは一生懸命ニーズに取り組んで世界で地位を築いています。国や県は、自分たちでやろうとしないで、生産現場のニーズに合った育種を民間ができるように促進していくことのほうが大事だと思います。
民間で育種をするに当たり、もし遺伝子組換えのハードルが高いということであれば、ゲノム編集を使えるようにすればよいでしょう。ただし、ゲノム編集に関して、現段階ではまだ民間企業の取り組みが日本では遅れており、このままだと遺伝子組換えと同じように世界に取り残されてしまいます。いまは国や大学が一生懸命やっていますが、民間の研究がもっと活発にならなければなりません。大学で研究したことをベンチャー企業や種苗メーカーが引き継いでいくとか、大学内の企業が進めるとか、そういう流れができたらよいと思います。

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