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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
フランス~一度も栽培が禁止されていない国~
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第2回 2018年01月31日
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こうしたTHC濃度ゼロ%の品種は、日本のように大麻草=麻薬という認識の強い国にとっては、畑からの盗難防止という観点で魅力的である。現在、同社の品種を日本に導入し、試験栽培するために、北海道ヘンプ協会が窓口となり準備を進めている。
農協が一次加工に参入し
製造まで一貫体制を確立
フランスの先進的な取り組みは栽培分野に限らない。ヘンプの茎は約20%が繊維に、約55~60%がオガラに、約10%がダスト(くず)になり、残りはロスとなる。農家が生産した原料を一次加工・二次加工する工程が必須で、その工程でも年月をかけて産業化を進めてきたのだ。新しい取り組みをいくつか紹介しよう。
一つ目は、農協がエコ事業として、産業用ヘンプの一次加工に新規参入した事例だ。カバック(Cavac)農協は、生産者5000名以上、総売上高1300億円、園芸店39店舗、穀類生産量80万t、従業員1200名を誇る西フランス地域で最大手の農協である。09年に13億円投資して子会社を設立し、亜麻(フラックス)とヘンプを栽培して、亜麻仁油とヘンプ断熱材を製造販売する事業を展開している。農協が原料生産から、加工・販売までの一貫体制を確立するために、ヘンプの繊維とオガラを分離する一次工場と断熱材を製造する二次工場を新設した。設備一式で約3億円するというベルギー製の一次加工システムは、1時間当たり藁束で3tの処理能力を持つ。
ヘンプ断熱材は、グラスウール(ガラス繊維)や羊毛繊維を用いた既存製品の2倍以上の高密度で、断熱性能に優れるという(図2)。フランスでは一般的な家を建てる際に必要な断熱材は約50というが、密度が40kg/立方mのものだと約2tのヘンプ繊維に相当する。ヘンプ繊維の収量は1ha当たり約1tなので、家1軒分は畑2ha分である。価格は既存製品より20~40%程度高いが、フランス政府からの補助は原料生産や加工段階では特にない。しかし、消費者が商品を購入するときに支払う付加価値税は、エコ製品に該当するヘンプ断熱材を選ぶと19.6%から5.5%に軽減される。このようなエコ製品への優遇政策が、ヘンプ製品の普及に効果を発揮している。
繊維の3倍とれるオガラは
ヘンプクリートで建材に
次に紹介するのは、オガラを使った建材の話題である。一次加工でヘンプから分離される繊維とオガラのうち、繊維の3倍近くとれるオガラは、競走馬などの動物用敷料等に使われるのがせいぜいで、新たな用途開発が求められていた。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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