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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
フランス~一度も栽培が禁止されていない国~
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第2回 2018年01月31日
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オガラの特長は、比重が0.1と非常に軽いことと、細かい穴がたくさん開いている多孔質性である。これらの特性を活かすべく、オガラに石灰を混ぜた建材の開発が80~90年代に進んだ。なかでも世界第一の石灰製造会社であるロイストグループでは、接合材の開発に(1)生石灰、(2)セメント系、(3)NHL(天然水硬性石灰)、(4)消石灰を用意して、その組み合わせも含めて試行錯誤を繰り返した。この研究を元に05年に開発されたのが、消石灰をベースにした「トラディショナルPF70」という商品である。断熱性、吸音性、耐震性、軽量性、耐火性に優れ、ヘンプとコンクリートを合わせた造語の「ヘンプクリート」と呼ばれている。木造または鉄骨の柱とともに厚さ20~30cmの壁材として使う(図3)。消石灰とオガラの混合比率により床材や屋根材、左官材にも利用可能だ。
ちなみに、日本で昔から親しまれている漆喰壁は、消石灰にスサ(麻や藁)と糊(フノリという海藻の糊)を混ぜたものである。いずれも原料にヘンプが含まれるが、ヘンプクリートはオガラを、漆喰は繊維くずを使うという違いがある。
自動車部品にヘンプ由来樹脂
プジョー308にも採用!
三つ目は自動車部品にヘンプ由来の樹脂が採用された事例である。自動車業界では近年、地球環境に配慮した新しいバイオ素材の開発が進んでいるが、ヘンプ繊維は安価に手に入る原料として白羽の矢が立った。自動車部品を製造するフォルシア社が開発したバイオ素材は2つある。
樹脂加工を担うジョイント・ベンチャーのAPM社と共同開発した「NAFILean」は、PP(ポリプロピレン)にヘンプ繊維を20%混合したバイオプラスチック樹脂である。年間製造量は約1万t。従来品に比べて20~25%軽量化でき、13年から乗用車「プジョー308」の内装パネルや計器パネルに採用されている。一方、三菱ケミカルと共同開発した「BIOMAT」は、ヘンプ繊維25%とキャッサバの根茎から製造したデンプン由来のポリブチレンサクシネート(PBS)75%から成る石油製品を使わない100%バイオ素材で、自動車の内装部品に使われている。
フランスでは、自動車産業をはじめ工業製品への用途が増え、高まる市場からの期待を受け、需要が高まれば必然的に原料生産も拡大するという良い循環が生まれている。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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