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新・農業経営者ルポ

農山漁村に根を張り、地域協同組合を引っ張るリーダー

愛媛県西予市狩浜の無茶々園は1974年に有志の農家3戸が始めた柑橘類の有機栽培から成長した地域協同組合だ。いまではリアス式の段々畑の目前に広がる海で揚がる真珠やちりめんじゃこなどの販売、さらには住民を対象にしたデイサービスセンターの運営も手がける。いわば狩浜を丸ごと商品化し、住民がこの地で一生涯暮らせる仕組みを築こうとしているのだ。その中心的な役割を果たすのは、販売会社の(株)地域法人無茶々園と福祉事業の(株)百笑一輝の代表を務める大津清次(52)だった。 文/窪田新之助・山口亮子、写真提供/(株)地域法人無茶々園

条件不利地で売上高9億円超

「耕して天に至る」
リアス式の地形の急峻な斜面一面に段々畑が広がる様子はこう形容されてきた。無茶々園の位置する明浜町狩浜地区はこの表現がぴったりの土地だ。漁港からわずかに住宅の並ぶ平坦地があったかと思うと、あとは斜面一面に石灰岩を積んで造った段々畑が広がる。
条件不利地で高齢化と過疎化も深刻で、周辺の地区には荒れたミカン園が目立つ山も多い。こうした悪条件のなか、無茶々園は40年かけて柑橘を中心に産業と地域を築いてきた。旧明浜町内外の会員農家約70人が110ha余りで作った有機栽培・減農薬の柑橘を契約単価で仕入れ、直売と生協や自然食品店などのルートで売っている。本部のある狩浜地区では約7割の面積を占め、明浜町では3割強、明浜町外も愛媛の最南端から中央部まで76会員がいる。
農事組合法人無茶々園と販売会社の(株)地域法人無茶々園、大規模農場を運営する(有)ファーマーズユニオン北条、福祉事業の(株)百笑一輝の4組織からなり、これを地域協同組合無茶々園が事務局としてまとめる。売上高は加工品も含め9億円を超えている。販売額でいうと2億円が直売、残りが生協や自然食品店などだ。
愛媛でも条件が悪いとされる南予地区に位置し、しかも交通の便の悪いどん詰まりのような場所にあるのに、職員は8割方が他県から来たIターン。全国の生協や自然食品店と取引があり、交流のために消費者もよく訪れる。地域の維持のための基金を消費者から公募して運営しており、閉鎖的な地形とは裏腹に、外の世界との結びつきは並の強さではない。

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