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スマート・テロワール通信

自給圏で臨床試験の役割を果たすモデル農場~大規模農場の人材育成に学ぶ~

スマート・テロワール協会では、地方大学が、プラットホームとして地域のサポート機能を果たすことを提唱している。その機能は、育種から栽培、土づくり、作物の貯蔵、加工、サービスまで、食産業に関わる一貫したプロセスを地域に提示することである。そのためには、大学構内の研究に加え、医学でいうところの「臨床試験」が必要になる。この臨床試験を行なう場として、ひとつの農業経営の規模に相当する「モデル農場」を地域内に設ける必要がある。
「モデル農場」のあり方を考えるとき、坂上隆氏(49)が経営する(株)さかうえに学ぶことがある。さかうえは鹿児島県志布志市に会社を構え、150haでジャガイモやケール、ピーマンなどの契約栽培事業、牧草飼料事業、農業経営IT化事業を展開している。3つの事業を支えているのは、取引先に対して質・量・時の約束を果たす、独自の高度な栽培ノウハウを培う、有機物循環型の土づくりをする、農業工程管理システムを整えるという4つの方針である。
注目すべきは、同じ方針のビジネスモデルを別の農場で展開できる人材を育成するという仕組みである。目安として、入社1年目に作業員として定植や除草作業などから始め、2年目には工程担当者として育苗管理などを手がけ、3年目には作物担当者として1つの作物を管理できるようにする。順調に成長すれば、5年目ごろからは農場長、10年目ごろからは経営者としての技量を身に付けることができる。さらに、独立して別の農場を展開する道が開かれている。早く成長できるように各職務はマニュアル化して教育し、若手にも早い段階から権限と機会を与えて成功体験を積ませている。成功体験があってこそ、将来、市場の需要に合った創意工夫ができる人材が育つと考えてのことだ。この仕組みは、「モデル農場」のあり方を考えるうえで、ひとつのヒントになるであろう。

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