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農業は先進国型産業になった!

外国人実習生受入れ日本の競争力低下―低賃金利用から人材活用へ意識改革を―


中国が労働力の輸入に転じることは、中国経済発展の新段階を意味する。発展途上国は労働力余剰である。経済発展に伴い雇用の場が増え、労働力過剰から不足の経済に移る。ルイス転換点(注、工業化の過程で農業部門の余剰労働力が底をつくこと)を過ぎて人手不足になると、途上国卒業である。
中国沿海部が労働力の輸入に転じるのは、中国経済が急速に進展し、多くの富裕層を生み出したからだ。賃金が上昇し、外国から出稼ぎ労働者を吸引できるようになったことが最も基本的な要因である。つまり、途上国を卒業し、先進国に移行したことのシンボリックな現象である(ただし、沿海部)。労働力受入れ論は中国が新しい発展段階に移行したという新々・中国論なのである。
実際、中国沿海部は家政婦に月収14万円(中国・フィリピンの協議で検討されているのは22万円)を払える所得水準になった。格差は大きく、中上層は日本人よりはるかに所得が高い。中国の経済社会は新段階に入ってきたといえよう。

6低賃金利用から人材活用へ意識改革を

国際間労働移動の最大の供給国(中国)が、労働力の輸入国に転じた時、日本に与える衝撃は大きい。現状はまだ中国からの供給が減っているだけであるが、やがて中国が出稼ぎ労働者の巨大需要国になれば(労働力の爆買い)、日本と中国はフィリピンやインドネシアの出稼ぎ労働者を取り合う競争になろう。日本への供給は大きく減っていくことが予想される。日本の少子高齢化はさらに進み、外国人労働者へのニーズは高まる一途だ。しかるに、日本向けの供給は減る。どうするか。
日本は環境整備を急ぐべきだ。第一に、日本人より安く雇うという考えを改めるべきだ。日本は低賃金の国になり、競争力を危ぶまれているのに、「日本人より安く」は時代錯誤の上に行動しているようなものだ。日本人より高く雇うという発想があって初めて、受入れの国際競争力が付く。筆者は「最低賃金プラス2割加算」ルールを提案している。高賃金を可能ならしめる経営になれということである。
第二に、労働コスト抑制から人材採用論に、外国人労働者についてのコンセプトを転換すべきだ。賃金は高くても、良い人材を獲得した方が戦力になると発想を変えてはどうか。会社の採用人事はそうではないのか。なぜ、外国人材の場合、低賃金利用だけを考えるのか。
もう一つ、特に農業経営者は次のことも考えたい。良い人材を採用すれば、指図しなくても働くので、経営者は頭脳労働に特化できる。農業が先進国型産業になるための必須条件である。牛馬や肥料、農薬でさえ品質を考慮するのに、なぜ雇用する人材の質は問題にしないのか。実習生の受入れは物財の調達ごとき導入ではだめなのではないか。

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