記事閲覧
12年のロンドン・オリパラで初めて、会場や選手村などの食堂で使われる食材の基準が定められた。「フードビジョン」のことだ。その中にグローバルGAPが推奨基準として採用されてその中にグローバルGAPが推奨基準として採用されていたのを都合よく解釈して進次郎の口を使って農家や農協に呼びかけたのである。
このセールストークを最初に思いついたのは社団法人日本生産者GAP協会(FGAP)の田上隆一理事長だ。機関誌のような「GAP普及ニュース」第40号(14年10月付け)で、「ロンドンオリンピックがグローバルGAPの認証取得を条件付けていた」として、「2020東京オリンピックでは 農産物の産地で最低でもグローバルGAP認証を取得すること」と書いている。東京オリパラの6年も前から仕組んでいたのだ。
グローバルGAP勢は、東京オリパラを認証農家や農協を獲得する絶好の機会ととらえ、一大PR攻勢をかけることにした。グローバルGAP協議会の今瀧博文氏も、グローバルGAPジャパン・コンサルタントの立場から、このセールストークをまき散らすべく、時事通信社の農水産情報誌「Agrio」(同4月15日付け)に、次のようなメッセージを発していた。
「農林水産省も経済産業省も大変な危機感を持っているようだ。というのも2012年のロンドン五輪では、選手村で使う食材についてはすべてグローバルGAPやそれと同等の規格で認証を得た農場のものしか使えなかった。20年の東京五輪でも同じことが要求されるかもしれない。日本でグローバルGAPを取得している農家はごく少数という現状では、日本での開催なのに食材を輸入することになりかねない。もう時間的余裕はない。このままでは日本はガラパゴスになってしまう」
グローバルGAP勢の世論工作でいつも感心させられるのは、そのメッセージ性だ。政府が大変な危機感を持っていると不安を煽っておいて、「グローバルGAP」「時間的余裕はない」「ガラパゴス」というフレーズを並べ立てる。進次郎ならずとも、いとも簡単にマインドコントロールをかけられてしまうのだ。
グローバルGAPは
ただの「推奨基準」
ロンドン・オリパラ組織委員会が示した「フードビジョン」では、「食の安全」「環境への配慮」や「持続可能性」という観点から食材の種類ごとに基準がまとめられた。そこでは、グローバルGAP認証取得は、ただの「推奨基準」と示されているにすぎない。それを今瀧氏は、ベンチマーク、つまり義務的基準と受け取れるような表現を使ってきた。悪質極まるのは、グローバルGAPは輸入農産物だけが対象として扱われていたのに、英国産も対象と受け取れる説明をしていたことだ。これは間違いである。
会員の方はここからログイン

土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
ランキング
WHAT'S NEW
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2020/08/07)
