ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

追悼 松尾 雅彦



【 ア・ラ・ポテト 美瑛への想いを込めて】

これは現在マイナー商品であるが松尾さんの想いが強い商品である。1989年の発売以来現在に至るまで秋から冬にかけて北海道産ジャガイモの季節限定の商品である。「パリッとした食感」の通常のポテトチップスに対してギザギザしたスライス形状の厚切りで「ザクッとした食感」で豊かなジャガイモ風味が特徴である。品種は「トヨシロ」で北海道のこの時期は格別食感が良い。ある範囲の比重と還元糖という制限があるので期間限定にならざるを得ない。発売当初は美瑛・上富良野地区のジャガイモが最もこの製品に適していた。コンドルは飛んで行くという曲にのって美瑛地区の美しいジャガイモ畑の風景のテレビCFは今でも記憶に残っている。松尾さんの美瑛への想いはその後も続いていた。

【 アクリルアミド問題 関係者の協力で大幅削減】

2002年にスウェーデンの科学者がアクリルアミドの発ガン性について発表して以来ポテト加工メーカーにとって頭の痛い問題となった。松尾さんはいち早くこの研究者を訪ねられた。アスパラギンというアミノ酸と糖のメーラード反応によって生成される。現在では穀類、いも類、野菜を加熱すると生成され、家庭での野菜炒めでも生成されることがわかっている。しかし当時「ポテトチップスに発ガン性」という見出しでポテトチップスがやり玉にあげられ、カルビーポテトチップスの写真が入った週刊誌の記事はショッキングであった。
ジャガイモスライス片を温水で洗うと糖分は溶出するのでアクリルアミドが減少するが、食感も香ばしさも悪くなる。しかもこれだけではとても根本的な解決にはならない。ある時、車の中で松尾さんから「阿紀さんがポテトチップスを不味くしてますね」と言われたことがある。まさにそのとおりで返す言葉も無かったが、松尾さんからアクリルアミド対策について言及されたのはこの時だけであった。研究所と工場の人たちがあの手この手で打つ手には限界があった。北海道と国の研究所、大学、農協、ジャガイモ生産者の皆さんの力でポテトチップ業界全体としてアクリルアミドを大幅に削減できた。特にカルビーポテト社が長年行なってきた圃場と貯蔵のバラツキ管理のノウハウ(図2)が大変貢献した。

【帯広畜産大学寄付講座 ジャガイモ新品種開発へ】

アクリルアミド問題は大変多くの人たちの力で大きな問題にならなかった。しかし最終的にはジャガイモ新品種開発という課題に行きつく。従来から国、北海道、農協、カルビーポテトなどの研究者によりジャガイモ育種が行なわれてきた。ただ国内で入手できる遺伝資源には限界があり、各研究所で交雑するための“父親”の開発(基礎育種)が必要であった。アクリルアミド問題はジャガイモ品質問題であるが、ジャガイモの量の確保の問題が想定された。ジャガイモ生産者の減少は農業全般に言われる問題でもあるが、反収を上げる技術開発が必要で特に新品種に期待がかかる。また長期的には地球温暖化によってジャガイモ品種も変わっていくことが予想される。生ジャガイモの輸入が原則的に禁止されているのでカルビーにとってジャガイモ新品種開発は避けて通れない長期課題である。

関連記事

powered by weblio