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特集

追悼 松尾 雅彦


松尾氏は、講演先や視察先で、「30年先のビジョンを描こう」という言葉を繰り返してきた。そして、この言葉を人々に伝えるだけではなく、このスマート・テロワールという壮大なビジョンの実現に向けて、自ら行動を起こしたのである。

【理論だけではなく成功した姿を見せないと】

現在、山形県庄内と長野県において、スマート・テロワール構築のための取り組みが進められている。松尾氏は、実現化に向けて動き出したころ、次のように語った。
「理論を説明するだけではなく、実際にやってみて成功した姿を見せないといけない」
長野県では、松尾氏の声掛けにより16年から農政部主導で自給圏の構築の準備に取り掛かった。17年には「地域食料自給圏実証実験」事業として、当面5年間の計画が立てられ、17年7月14日、長野県野菜花き試験場佐久支場に設けた実証展示圃が公開された。松尾氏は、阿部守一知事から「食の地消地産アドバイザー」に任命され、関係者たちに助言をしてきた。
山形県でも、16年から山形大学農学部を中心に取り組みが始まった。もとより地方大学が地域の食産業のプラット・フォームとしての役割を果たすことを提唱していた松尾氏は、その実現のために大学に教育研究活動費を寄付した。16年4月、山形大学農学部に寄附講座「食料自給圏(スマート・テロワール)形成講座」が開設され、畑輪作の研究のための実証展示圃が設けられた。17年2月には、飼料調製給与の研究のための豚舎、17年11月には、穀物調製調査棟が開設された。
そして、17年11月28日、山形大学農学部と山形県農業会議が主催する「庄内スマート・テロワール」収穫感謝祭が開催され、2年間の取り組みと成果が地域住民に報告されるまでに進展した。松尾氏は、この日、檀上で次のように語った。
「自給圏のエリアを決めて、住民たちが自分たちで子や孫にどんな地域を残したいのか30年先のビジョンを描こう」
この日をもって「庄内自給圏をつくる会」準備委員会が設置され、現在、山形大学農学部、山形県農業会議、農業、加工業、小売業らによって、「庄内スマート・テロワール」構築のための活動が展開されている。松尾氏の描いたビジョンは、こうして引き継がれていくこととなった。

記事再録
【同伴者たち】
産地価格で国際比較をするから日本農業の可能性も見えない!/カルビー(株) 社長 松尾雅彦
https://agri-biz.jp/item/detail/821

【目線を揃えて<生産・消費>異業種同盟対談】
“土”と“顧客”を共有するために“知”と”努力“を結集する (前編)
https://agri-biz.jp/item/detail/2281

【目線を揃えて<生産・消費>異業種同盟対談】
“土”と“顧客”を共有するために“知”と”努力“を結集する (後編)
https://agri-biz.jp/item/detail/2298

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