ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

追悼 松尾 雅彦


山下 松尾氏はよく「消費者につながる団体戦」だと言ってましたね。私は個人戦で優秀なジャガイモ農家が出てくるような改革でいいんじゃないかと思ったんだけど、彼の考えは違ったんだな。地域にジャガイモ農家が10人いたら、上から目線で言わせてもらえば優秀な人は約1割しかいない。その1割だけだと十分な量を確保できない。それで3分の1はダメだというのも各地域共通で、上から3分の2の農家を中心にどう巻き込んでいくかが産地化のカギを握る。これが共通の現状と課題だったんです。だから個人戦ではなく団体戦なんですね。
昆 団体戦でしかもジャガイモ産業全体の発展を考えていたから、欧米メーカーのポテトハーベスターを松尾氏たちが購入し、日本メーカーに真似させて産地に導入することも積極的にやっていましたね。
浅川 それで思い出したことがあります。松尾氏に『ポテカル』創刊準備号で生産者と対談してもらったのですが、いきなり「100年後にカルビーという会社はなくてもかまわないが、ジャガイモ作りは100年後も面白くなくてはいけないし、 消費者にはポテトチップスを楽しんでいてほしい」と発言されたんです。これには驚きました。
それとポテトハーベスター以外に松尾氏が日本のジャガイモ産地に導入しようとしていたものが、米国型の「エクステンションセンター」です。産地に近い大学が育種や栽培・加工技術の研究開発からマーケティング、技術指導までを行なう。これも松尾氏が2週間の訪米で学んだことですが、日本の大学にエクステンションセンターの機能を持たせようとしています。「大学自体がモデル農場にならないといけない」とも話していて、帯広畜産大学や山形大学での松尾氏個人による寄付講座の開設には、その意図が明確にありましたね。また、長野県では、スマート・テロワール構想が地方創生総合戦略として正式に採用され、2016年から実証に向けた取り組みが始まっています。
五十嵐 勉強会は秋田や青森でもやっており、立ち上げを希望しています。松尾氏は山形大学に「庄内スマート・テロワール」構想実現に向けたエクステンションセンターの役割を期待していましたし、そうしたいと自分たちも努力しています。
昆 松尾氏は、再掲載した菅野祥孝氏との対談「目線を揃えて(後)」(2003年7月号)でも触れていますが、なぜカリフォルニアワインがブランドになったかといえば、ブドウを栽培する農家がバラバラにやるのではなく、地域の大学を中心にトップレベルの技術と情報を持つ人が診断を下すからです。医療の世界と同じで、臨床の現場から集まってきた情報を総合的に見て判断したり、医療技術・機械の進歩や新薬の研究開発をするのは大学病院や医学部にいる世界トップレベルのお医者さん。農業にしても診断はプロがすべきで、結果のばらつきは現場の状況を常にフィードバックすることでいずれ修正されていきます。臨床現場と研究開発の一体化・連携が欠かせないんです。

関連記事

powered by weblio