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特集

追悼 松尾 雅彦



【末端まで気配りするオーケストラの指揮者】

昆 松尾氏の思想と行動を足跡とからめて駆け足でたどってきたので、ここからはもう少し細部にこだわって話を進めたいと思います。
松尾氏には訪米時の原風景からスマート・テロワール構想に至る全体像があり、自分の進むべき道の正しさに確信を持っていました。だからこそ素人だったにもかかわらず、「土壌管理や品質管理がなってない」「機械化も遅れている」「品種や育種がダメだから、海外から持ってこよう」と農業界の問題点を指摘し、解決策を提示して行動に移し続けました。当然、農家だけでなく行政からも農協からも強い抵抗に遭います。
山下 行政や農協から抵抗されたことは何度もありましたね。
浅川 片や明治以来の制度を守ろうとする側、片や世界トップレベルの食品産業化を目指すのですから、方向性が合うはずがありません。
昆 『ポテカル』を創刊した頃、カルビーがジャガイモの端境期に小売の棚を確保するために米国から原料を輸入し始めました。小売の棚を通年で確保することは北海道産のジャガイモを守ることなのですが、大反対したのは当事者のホクレンでした。反輸入のイデオロギーに固執しているだけで、実態は自殺行為なんです。
あるいはカルビーが2000年代に苦労の末に実現した「三連番地管理」と名付けたトレーサビリティのシステムは、商品の信頼性を高めると同時に、工程管理の合理化にも大きく貢献するものでした。商品のバーコードを入力すれば、いつどの工場で製造出荷され、その原料はどこの畑で採れて工場のコンテナに納入されたものかが瞬時にわかる。なお、三連番地管理の詳細は、「目線を揃えて(後)」をご覧ください。農工一体における加工業の果たす役割と責任を理解できると思います。
浅川 商品一袋ごとのバーコード番号、畑の番号、工場の貯蔵コンテナ番号が一致しているから「三連番地管理」なんですね。畑番号と商品バーコードが一致しているということは、消費者は誰が栽培したジャガイモを食べているかがわかる。カルビーのポテト商品は生産者の顔が見える商品なんです。一山いくらで売る仕事と違って、農業を誇りある仕事にすることで、農場も農家もよくなっていくわけです。
山下 消費者が「ちょっと中がピンク色だった」とカルビーのお客様センターに電話すると、すぐに生産者を特定できるからね。
昆 これも「目線を揃えて(後)」で松尾氏が語っていることですが、三連番地管理に取り組む前の2002年から、ジャガイモ購入時のシステムを大幅に変更しているんですね。品質の悪いイモは早く悪くなるし、芽も早く出てしまい加工の手間が増えるので、買わない。多少の売り上げ減はかまわないという方針に転換し、質的契約栽培への移行が本格化していくわけです。

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