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土門「辛」聞

今年もお騒がせ週刊ダイヤモンドランキングの天真爛漫

農閑期の定番企画となった週刊ダイヤモンド誌の「儲かる農業」特集―。昨年版の目玉企画だった「〈告発スクープ〉産地偽装疑惑に投げ売りもJAグループの深い闇」という記事が誤報となった。偽装と決めつけた相手から訴訟まで起こされてしまっている。咋年版で打ち切りになるのかなと思っていたが、裁判なんかどこ吹く風とばかりに今年版も意気軒昂だ。

あの秋田おばこが経営健全度第3位だって

「儲かる農業」特集で、いつも思うのは、名物企画になった農協ランキングのデタラメぶりだ。その内容は、ネット上に氾濫する根拠の乏しい口コミ・ランキングサイトと何ら変わるところはない。今年版で思わず吹き出したのは、経営破綻状態のJA秋田おばこ(秋田)に経営健全度で100点満点中84.2点のハイスコアをつけ、なんと調査対象120農協中、3位にランク付けしたことだ。
これは単なるケアレス・ミスではない。JA秋田おばこの経営破綻は、昨年12月に地元紙を中心に報道された。年が明けてからは全国紙でも報道されるようになり、今年版の「儲かる農業」特集を掲載した2月24日号の発売日は、同19日。日頃、新聞をきちんと読んでいたら、JA秋田おばこをランキングから外すことができたはず。その方が読者にずっと親切だ。週刊ダイヤモンド誌が標榜する「おもしろネタ至上主義」の底の浅さをさらけ出すようなエピソードだ。
この経営破綻こそ、同誌が取り上げるべきテーマだ。農協が隠蔽する米集荷の不透明な部分、米流通をめぐる全農と農協の関係、農協経営の実態など興味の尽きない切り口がいくつもある。「おもしろネタ至上主義」とは、鬼面人を驚かすような話題を並べ立てることではない。経済専門誌を名乗る以上、マーケットが知りたいテーマを取り上げ、正鵠を射た解説を読者に提供することだ。
JA秋田おばこの経営破綻は、農家から米を高く買ったことから起きた。農協は、米を集荷する際、農家に概算金と呼ぶ前払い金(最終精算価格の95%程度)を支払うが、その額が卸などへの販売金額より上回ってしまったのである。ライバルの商人系業者などとの競争が激しく、販売のことを考えずに高い値段で買い上げたことになる。
以前にも概算金過払いはあった。そのときは過払い分を精算段階で農家から取り返していた。こんなことがまかり通ったのは、農協が米集荷で支配的な立場にあったからだ。旧食管制度がなくなり、農協のライバル、商人系集荷業者が力をつけてくると、そんなことをしていたら、農家にそっぽを向かれ、農協に米が集まらなくなるからだ。

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