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【土門「辛」聞】
今年もお騒がせ週刊ダイヤモンドランキングの天真爛漫
- 土門剛
- 第163回 2018年03月29日
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あの秋田おばこが経営健全度第3位だって
「儲かる農業」特集で、いつも思うのは、名物企画になった農協ランキングのデタラメぶりだ。その内容は、ネット上に氾濫する根拠の乏しい口コミ・ランキングサイトと何ら変わるところはない。今年版で思わず吹き出したのは、経営破綻状態のJA秋田おばこ(秋田)に経営健全度で100点満点中84.2点のハイスコアをつけ、なんと調査対象120農協中、3位にランク付けしたことだ。
これは単なるケアレス・ミスではない。JA秋田おばこの経営破綻は、昨年12月に地元紙を中心に報道された。年が明けてからは全国紙でも報道されるようになり、今年版の「儲かる農業」特集を掲載した2月24日号の発売日は、同19日。日頃、新聞をきちんと読んでいたら、JA秋田おばこをランキングから外すことができたはず。その方が読者にずっと親切だ。週刊ダイヤモンド誌が標榜する「おもしろネタ至上主義」の底の浅さをさらけ出すようなエピソードだ。
この経営破綻こそ、同誌が取り上げるべきテーマだ。農協が隠蔽する米集荷の不透明な部分、米流通をめぐる全農と農協の関係、農協経営の実態など興味の尽きない切り口がいくつもある。「おもしろネタ至上主義」とは、鬼面人を驚かすような話題を並べ立てることではない。経済専門誌を名乗る以上、マーケットが知りたいテーマを取り上げ、正鵠を射た解説を読者に提供することだ。
JA秋田おばこの経営破綻は、農家から米を高く買ったことから起きた。農協は、米を集荷する際、農家に概算金と呼ぶ前払い金(最終精算価格の95%程度)を支払うが、その額が卸などへの販売金額より上回ってしまったのである。ライバルの商人系業者などとの競争が激しく、販売のことを考えずに高い値段で買い上げたことになる。
以前にも概算金過払いはあった。そのときは過払い分を精算段階で農家から取り返していた。こんなことがまかり通ったのは、農協が米集荷で支配的な立場にあったからだ。旧食管制度がなくなり、農協のライバル、商人系集荷業者が力をつけてくると、そんなことをしていたら、農家にそっぽを向かれ、農協に米が集まらなくなるからだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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