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新・農業経営者ルポ

高橋がなりに鍛えられたナンパ師のまっとうな農業


その一環で売り値に手をつけた。こ
れはあるできごとに端を発している。
「量り売りのスタイルだったんですけど、お客様に金額をお知らせしたときに『高っ』という顔をされるのを目にするときがありました。そのあとにしぶしぶお金を支払われるのを見て胸が痛んだんです」
当人からすれば手に取って量ってもらったからには買わないわけにはいかないという心理が働き、落ち込んで家路に就くことになる。インターネットでモノが手に入る時代にわざわざ直売所まで足を運んだのに、辛い思いをして帰らせるのは失礼だと感じた内田は、昨年から1房ごとに値札を付け、その最小単位を50円に改めた。また、30パターンあった宅配料金も3つに絞った。値札についてはパートタイマーからブーイングの嵐だったというが、顧客第一に徹して導き出した結論は、会計処理の時間を短縮し、売り上げの向上や顧客層の拡大にも貢献した。
こうした経営努力の積み重ねで2000万円あった借金は、今年で完済できるめどが立ったという。

主観ではなく、客観

国立ファームでの勤務時に上司と銀座を歩いていると突然ナンパするよう声をかけられたことがあった。
「ナンパは昔からやってきましたので苦になりませんでしたけど、ここではうまいこと行きませんでした。銀座の女性はみなさん素敵で、声をかける時点で気持ちで負けていたんです。上司からは『お前は無意識に楽な道を歩んでいるんだぞ』と言われ、自分の小ささを実感したのを覚えています」
がなりからの言葉で深く心に刻まれたのは、主観ではなく、客観の重要性だったという。お客さんのことを意識して資料を準備してもどこかにほころびがあった。何をするにしても常に相手に寄り添うことの大切さを学んだ。
前述のとおり、下戸の内田はナンパのテクニックを磨いてきた。それは人付き合いでも有効に作用したといえるだろう。そのうえで、国立ファームで得た収穫は、潜在的な独善性を表出してもらい、自分の殻を破れたことにあったことかもしれない。その前と後とで“生まれ変わった”内田は、パートタイマーと同列のようなところから現場に目を光らせるマネージャーへと立ち位置をシフトする。パートタイマーが違和感を覚えても、お客さんに喜ばれ、農園を繁栄させるために心を鬼にしている。
「シャインマスカットがないからとご立腹されて帰られたお客様がいたことがありました。後からパートさんに状況を確認すると、お客様の心境を理解してご返答していないようでした。普段の僕との会話でも気になることがあればそのつど指摘しています。細かくてうるさいと思われているでしょうけど、お客様に求められることが一番です」

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