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特集

追悼 松尾 雅彦 後編


小川 小売業での成功例は少ないですね。私も大学に入学するために東京に移住してきましたが、都会には生活が便利で情報が豊富だという快適さがありますからね。
松尾 いま何ができるかではなく、30年先を見て、どこまでの可能性があるかを示さないとダメですよ。食文化だとか、住宅だとか生活だとか、それらをおしゃれにする将来図を描く必要がありますよ。
小川 いまの人たちは田舎に出かけても都会にいるのと同じパターンで楽しもうとするから、そこまで描いてあげるんですね。
松尾 30年先の将来図を描くことが人の考えを変える上では非常に重要ですよ。なぜこんなに変わるのかと聞かれるぐらいのことを描いてほしいですね。庄内の場合は、いま水田ばかりで畜産がないわけだから、少し高いところにある水田では畑作をやって、棚田は一部残して、傾斜地は羊とか牛の放牧地になるとかね。30年というスパンで考えると、限界集落の住民は次世代の人たちになるわけです。もっとコンパクトに街のほうに集まってもよいと思います。農村の将来を計画しようというのはそういうことです。
小川 それなら若者が戻ってくるかもしれないですね。女性も。
松尾 イタリアの事例を調べてみると、農村の計画図ができていて、評価されたところから補助金が付くんですね。日本はつい最近まで、いろんな規制があって地方自治体に自分たちの将来像を描かせなかった。地域でつくれるようになったのは、10年くらい前からですよ。だから、それに呼応して市街地の美しさとか言い出したわけです。
--松尾さんは常々、いま日本の農村の疲弊している姿は30年前のEU諸国の姿だとおっしゃっています。イタリアやフランス、ドイツも同じ経過をたどってきたということです。でも30年経って復権しています。そこに参考にするべきサンプルがあるのではないかと。農業改革も日本より30年早くやっていますから。
松尾 工業社会は岩倉具視の使節団が学んできて、戦争のやり方も学んできて……。ところが、農業社会は学んでいないんですよ。

土地や風景は誰のものか公共を大切にする意識

小川 少し話は脱線しますが、北海道の美瑛町でやられているNPO法人「日本で最も美しい村」連合にはいつから携わっているのですか?
松尾 カルビーの産地が美瑛にあった関係で相談を受けて、02年にフランスの美しい農村の視察に行って、05年にスタートしました。でもね、美しい村をやると、だいたい選挙で落ちる……。

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