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特集

追悼 松尾 雅彦 後編


小川 どうしてですか? 有名になるでしょう。
松尾 経済の成長政策に比べたら、美しい村というのは縮小政策だから銭を稼げないということですよ。たとえば、イギリスやフランス、ドイツ、イタリアあたりで人口5000人以下の村に行くと、広告は一つもありません。広告が一つあると、二つに増えて醜い村になる。人が来なくなるわけです。パリのシャンゼリゼも規制が厳しいでしょう。ヨーロッパではそういった公の場所の価値が重要なんです。民族間の侵略だとかがあったなかでも地域社会を守るという意志形成はしっかりしています。日本では家をつくると塀で囲うでしょう?
小川 私の家にはその塀がありませんよ(笑)。学生時代に米国では塀のない一軒家に住んでいて、家の前の芝生からそのまま家に入ることが快適だったので。周りから見えるので逆に泥棒に入られたことがありません。広告看板の話も塀の話も、土地や風景は誰のものかという考え方に帰着しますね。
--その話題で、近所の酪農家の仲間たちと自分たちの牧場を開放して観光客が自由に歩けるようなフットパスを始めた根室の酪農家を思い出しました。公にすることで得られるものの意義をわかっているんです。
小川 日本人はもっと公共を大切にしなきゃいけません。とくに土地はみんなのもだと思っていれば、風景もみんなのものなので看板を掲げなくなりますよ。

スマート・テロワールの責任は誰が負うのか

小川 本題に戻りましょう。最後の質問は、スマート・テロワールの責任者は誰なのかです。カルビーは、強力なマーケティング力を持った垂直統合のモデルですよね。それを自給圏のなかで展開するには、スマートな経営機能を持った組織が必要になると思います。
松尾 ある程度、協同組合あるいは管理組合みたいなものは必要になると思います。情報はジャストインタイムで動かすほうがいいわけですが、製品にして在庫することは一切やりません。地域内に消費者がいるわけですから。
小川 物流や運営のための情報システムのセンターは、自給圏のなかで共有するわけですね。
松尾 物流は手間の交換が基本ですが、少ない量の集荷や出荷の物流と、その運営のための情報システムが必要です。農協には設備も資本もあって、人もいます。それがうまく機能していないわけですから、農協としても新事業として請け負うのがいいと思います。一方、商流のモデル一つだけだと社会主義になりますから、それに従わない人はその地域に住みにくくなってしまいます。二つ、三つあったほうがいいですね。

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