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農業は先進国型産業になった!

外国人実習生の現地ルポ 実態と課題と展望 第1回 3・11の時も中国人実習生は帰国しなかった 東日本営農事業協同組合


人を使うことを覚えると、農業経営者は楽になる。仕事を任せてもOKになれば、海外に自由に旅行できるようになる。留守中、実習生2人できちんと仕事する。
農家の社長さんたちの視野を広げる教育も、末吉氏の仕事のようだ。「実習生の採用に際し、面接のため海外に引っ張り出すと、社長も変わる。奥さんで持っている農家も多いが、奥さんが心を開いてくれると、実習生はもっとうまくいく。奥さんをタイの面接に連れて行ったら、気持ちを開放するようになり、大きな効果があった」(末吉氏)という。
両親が変わると、二代目もうまくいくようだ。多くの農家で息子に経営を移行中であるが、父母は息子を「まだ頼りにならない」と見がちだ。いまだに後継者は父母の下でガンジガラメだ。しかし、両親が海外旅行すると、息子が急に成長するようだ。

5 競争がサービスの質向上を生む

受入れ監理団体は無数にある。東日本組合は経営発展できるだろうか。末吉氏によると、農協も東京の監理団体も競争相手ではないという。
東京所在の監理団体は農家に実習生を斡旋した後は、手紙やFAXで、何やって下さい、これやって下さい式の事務的な対応。地元の農協もサラリーマン型で、5時になると帰宅するので、人の管理はできない。実習生は5時以降に問題が起きる。
これに対し、東日本組合は「現地食材取り寄せサービス」など、ほかの監理団体ができないことをやっている。業界広しといえども東日本組合だけのサービスである。農協やほかの組合からも依頼があり、頼まれて末吉氏が食材を供給しているようだ。ほかが手がけないサービスで実習生に親身に対応しており、ほかの組合との“製品差別化”に成功している。末吉氏は実習生から「東日本組合に行きたい」と、信頼感を築くことでビジネスを継続、発展させたいと考えている。
監理団体のサービスの水準は様々だ。サービスの質が低い監理団体は、将来、途上国の経済発展などに伴い実習生の供給が減った時、実習生を確保できなくなる。末吉氏の東日本組合は実習生の確保で競争優位に立つであろう。
実習生受入れ業界は「競争」がなく、監理団体のサービスの水準も高いとはいえない。しかし、今後、競争が発生すれば、監理団体のサービスの質は高位平準化していく。そうなれば、実習生の失踪なども減っていくであろう。

(参考)
拙稿「外国人実習生の効果分析技能実習生は財産だ、後継者、高所得の決め手は実習生」『農業経営者』18年2月号。

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