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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ドイツ ~環境にやさしいヘンプ製品の先駆け~


ホック女史はさらに自らのマーケット拡大と環境素材である産業用ヘンプの普及のために国会議員に手紙を送り、ロビーイングを仕掛けた。その行動が実を結び、03年度に家を建てる際にエコ断熱材を採用した場合に1立方m当たり40ユーロ(約5600円)が還付される制度ができ、ヘンプ断熱材もその対象に含まれることとなった。ヘンプ断熱材の価格はグラスウールの約3倍と高価で、この還付金によりその価格差が抑えられるというわけだ。ホック社のヘンプ断熱材は13年に欧州最大の賞金総額を誇る「ドイツ環境賞」を受賞し、次世代を見据えた持続可能な企業活動を徹底し、環境と経済の両立を実現してきた企業精神がようやく大々的に評価されたのである。
ヘンプの利用は自動車業界にも広がっている。通常、プラスチックの強度を上げるためにはガラス繊維を混合させるが、90年代に注目されたのが環境にやさしい天然繊維である。天然繊維は、ガラス繊維に比べて軽く、衝突時の安全性においても廃棄するときにもメリットが大きい。他社に先駆けたのはメルセデス・ベンツ社(現ダイムラー・クライスラー社)である。ドアトリムなどの自動車内装材に天然繊維を使うことで、軽量化と二酸化炭素の排出削減、地域経済の再生、コスト削減を実現したのだ。ブラジルの工場ではココヤシ繊維を、南アフリカではサイザル麻を、フィリピンではマニラ麻を、そして本社のあるドイツではヘンプとフラックス(亜麻)をそれぞれ採用している。この取り組みは欧州の自動車メーカーに広がり、一部の高級車モデルにヘンプを含む天然繊維を使った部材が使われている。

ドイツ発の国際的な情報交流の場

前述したフランク氏の活動は自身の会社事業に留まらない。ほかの一次加工会社の仲間とともに00年にヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)を設立し、産業用ヘンプに関する情報を国別にまとめ、情報発信を行なっている。いまでは正会員に23社、準会員に119の企業と団体が36カ国から加盟した組織となり、毎年6月にドイツで300人規模の国際会議を開催している。分野は農業や繊維、食品、建築、複合素材、医薬など多岐に渡り、大学や研究機関だけでなく事業者の発表も多く、新規参入者にとっても貴重な情報交流の場である。なお、日本からは北海道産業用大麻協会が唯一の準会員として参加している。

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