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【土門「辛」聞】
「全農改革」にマーケットが突きつけた通知簿
- 土門剛
- 第164回 2018年04月26日
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全農らしいなと思ったのは、改革の名に値しないような小手先の取り組みを並べ立て、その総括について「ほぼ計画どおりに進捗」と自画自賛してきたことだ。彼らが示した根拠は、どれも裏付けが乏しく、説得力に欠けるものばかり。「取組状況」文書などを材料に全農が改革と称するものにマーケットの視点から通知簿をつけてやりたい。
「取組状況」を読んで思わず首をひねってしまったのは、政府が強く求めた肥料価格の引き下げに「概ね1~3割の価格引き下げを実現」と回答してきた部分。全農の説明をどう分析しても、そのような引き下げが実現するとは思えない。主要部分を紹介する。
「入札によりメーカー数を14社33工場から8社13工場に削減、銘柄あたりの生産数量を約250tから約4000tに拡大し、製造固定費を引き下げ。供給範囲も全国一律からブロック単位に変更し、配送コストを圧縮。これらの結果、概ね1~3割の価格引き下げを実現。今後、普通化成一般、苦土入り高度化成へ対象品目拡大」
「取組状況」が示す根拠では、1割の引き下げですら実現は覚束ないと考えた。その前に、肥料製造のコスト構成を説明しておこう。手がかりになるのは、経産省が12年に実施した「化学肥料製造における実態調査」や、全農肥料部が10年前に作成した「系統における肥料事業の概要とコスト低減対策」と題した資料だ。いずれも最近の資料ではないが、そのコスト構成などは現在もほぼ同じだろう。これらを参考に作成したのが表1で、右の方に原価の区分けについて全農と商人系メーカーの違いを示しておいた。
肥料価格引き下げにはカラクリがあった
「取組状況」を読んで思わず首をひねってしまったのは、政府が強く求めた肥料価格の引き下げに「概ね1~3割の価格引き下げを実現」と回答してきた部分。全農の説明をどう分析しても、そのような引き下げが実現するとは思えない。主要部分を紹介する。
「入札によりメーカー数を14社33工場から8社13工場に削減、銘柄あたりの生産数量を約250tから約4000tに拡大し、製造固定費を引き下げ。供給範囲も全国一律からブロック単位に変更し、配送コストを圧縮。これらの結果、概ね1~3割の価格引き下げを実現。今後、普通化成一般、苦土入り高度化成へ対象品目拡大」
「取組状況」が示す根拠では、1割の引き下げですら実現は覚束ないと考えた。その前に、肥料製造のコスト構成を説明しておこう。手がかりになるのは、経産省が12年に実施した「化学肥料製造における実態調査」や、全農肥料部が10年前に作成した「系統における肥料事業の概要とコスト低減対策」と題した資料だ。いずれも最近の資料ではないが、そのコスト構成などは現在もほぼ同じだろう。これらを参考に作成したのが表1で、右の方に原価の区分けについて全農と商人系メーカーの違いを示しておいた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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