ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

土門「辛」聞

「全農改革」にマーケットが突きつけた通知簿


次いで買取販売。初年度で買取販売の目標を達成できたのは、多分にフロック要因があった。17年産の集荷で概算金を高めに打ち出したことである。収穫してから米価が上昇したことが幸いしたのだ。もし米価が逆の動きをしたら、概算金を下回ったりして損を出すことになる。JA秋田おばこ事件と同じ轍を踏むことになるのだ。
買取販売の目標は、6年後の24年に主食米取扱の70%というものだ。その数字を目にして、コメの先物・現物市場が存在しない中、将来を見越した買取販売が、どうやって実現できるのかという疑問がわいた。皮肉なことに全農など農協組織は、コメの先物市場への参加すら拒んでいる。「年次計画」で示した数字は、単なる絵空事としかいえない。
●園芸事業
米穀事業に次いで園芸事業。これも卸売市場をすっ飛ばしてスーパーや外食チェーンなどへの直接販売の比率を増やすことが目標だ。昨年の「年次計画」では、直接販売を全農取扱額約1兆円の過半5500億円を目指すという大風呂敷を拡げてみせた。
園芸事業は、全農が苦手とする分野なので、目標達成にはスニーカーでエベレストに登るぐらいの困難がある。
全農は「取組状況」公表前に、東西の仲卸3社と相次ぎ業務提携を結んでいた。その提携内容は、判で押したように「更なる関係強化に努め、生産基盤の維持・拡大や国産青果物の販売拡大等についてお互いに協力して取り組むことで合意」と書いてあった。
当事者に失礼だが、コピーしたような文言を繰り返し目にしたとき、何か場当たり的な業務提携の印象を受けてしまった。全農が狙っているのは、野菜や果樹の販売先の開拓だ。これら仲卸3社が、全農の要請に応じて商売敵に塩を送るかという疑問がつきまとう。米穀と違い青果の仲卸にすれば、全農に協力を仰がなくても農協から直接集荷できるからだ。全農が直接販売を増やすため、自らの顧客を紹介するようなことはあり得ないだろう。
  ……………………

全農が取り組んだ「改革」にマーケットの視点から通知簿をつけるとしたら、合格点を献上できるものではない。いつものパターンで問題をただ先送りしただけというのが正当な評価だろう。

関連記事

powered by weblio