ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

シリーズ追悼 松尾雅彦

「日本で最も美しい村」連合に込めた志


なぜ国の補助金をもらわないのか。お金がないのだから、もらえばいいという人も出てくる。しかし、松尾さんは頑として言い続けた。
「理由のないお金をもらったら終わりだ」
補助金をもらわないと言っているわけではない。フランスのように、村がゾーニングの計画を立て、それに対して国が補助金を出すなら価値がある。つまり、お金を出す側が、何のために出すのか分かって出しているならよいが、税金で箱ものをつくっても、地域が自立できるわけがないということだ。
会員の町村長さんたちに対しても、松尾さんはいつも辛口だった。住民やサポーターのお金を使っているという認識を持て。個々の村が世界で最も美しい村になろう。加盟しても、まだ仮免許なんだ。なぜ、皆さん、自分たちの最も美しい村をつくろうとしないんだ。霞が関の政策ばかりやっているではないかと。国に頼らず、「民の力」で、日本の過疎の問題を解決しようという松尾さんの志が、ここに表われている。
志を言い続ける人がいなくなったいま、「日本で最も美しい村」連合の本来の志が風化してしまうのではないかと心配だ。それでも、これまで松尾さんと出会った人たちのなかには、同じ志の人が多い。松尾さんの遺志を継いでいく人たちは、たくさんいると信じている。

「最も美しい村」から「スマート・テロワール」へ

私は、当初、松尾さんから10年間手伝ってくれと依頼されていた。連合の発足から10年経ったとき、終了の報告に行くと、松尾さんは立ち上がって言った。
「10年間ありがとうございました。ところで、見捨てずに、あと5年間だけ応援してくれませんか」
その言葉の後に、すぐに登場したのが著書『スマート・テロワール』である。
「日本で最も美しい村」連合に加盟した町村は、10年経っても人口減少は止まらなかった。松尾さんは、なぜ、人口が減るのか勉強し、「最も美しい村」だけでは足りないと気がついたのだろう。いくら「美しい村」をつくっても、お金が村に落ちる経済的自立に結びつかない。お金をつくる仕組みとして「スマート・テロワール」に行きついたのではないか。
松尾さんが「スマート・テロワール」の話をすると、「日本で最も美しい村」はどこに行ったんですかと言う人が多いが、じつは、つながっているのである。
松尾さんが言った「行きつけの田舎」は3つのものを持っている村である。美味しいもの、美しい景観、泊まる場所。この3つがある「最も美しい村」。しかし、これは「点」にしかならない。「点」だけでは、人口は減っていくし、町村は自立できない。

関連記事

powered by weblio