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江刺の稲

元気でヤンチャな若者たちこそ地域の宝

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第264回 2018年05月30日

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ルポにも紹介されているが、彼らは全中の平成27年度「地域営農ビジョン大賞優秀賞」受賞という農水省や全中のお眼鏡にかなう優等生ということだろうが、森田さんらは「地域を再建しようなんて建前で活動しているわけじゃありませんよ。面白いからやろう。だって地域や農業の世界を見渡せば僕らの時代が来ることは目に見えている。水稲のコントラクターは見合う仕事。だから、水稲作でもあまり労力的に無理のある春作業は限定的にして秋作業を中心にコントラクターをする。水田部門を中心にして、しかもイネのWCSは機械化ができて収益が上がる。それ以上に、皆が面白がっているのはハウス作りを請け負う作業です。要は自分の本業をやりながら、水稲作でもハウス作りでも、自分の家では体験できない仕事を面白がって技術を習得して小遣い稼ぎ。そして、皆で酒飲んで気勢を上げる。言ってみればお祭りのノリですよ」
構成員の中で水稲の専業は丸さんだけ、だから自分の作業が忙しい丸さんは水稲の作業にはほとんど出役しない。できる人、やりたい人がやるという。それもスマホのLINEで「明日こんな仕事があるけど出られますか?」と仲間に呼びかけ手を上げる。もちろん作業計画は組まれるのだろうが、そんな感じで仕事が回っていく。
「地域のために」なんて言葉を使いたくないのは彼らの照れもあるのだろうが、それぞれが若い自立した経営者で、それも漁師も含む異質な存在である者たちが結果として地域の役に立つ。建前の正義を語っても経済が成り立たなければ続かない。また、必要とされるからこそ経営も成り立つ。
彼らを見てこう思った。地域を守れ、それも様々な政策支援がある前提での集落営農による地域農業の限界。地域の構成員が経営能力や技術力のあるなしにかかわらず「みんな一緒」で運営する集落営農。それも老人の声が大きく、これからの時代がどうなるかなど関係なく、今の損得だけを考えて方向が決まってしまう。だから、ほとんどの集落営農組織は経営が行き詰まっており、経営内容が良い集団でも6割の組織では後継経営者がいないという実態なのである。
彼らのところには全国各地から「視察者」の訪問が絶えない。でも、彼らを視察して、その形をまねてみたところで、面白がってそれに取り組める「人」がいない限り村は元気になっていかないのだ。

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