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農業技術進化系

北海道のテンサイ生産者は除草の悩みから解放されるか


「KWS 8K879」は、細胞培養技術という一般的な技術で開発された。これは、日本でもイネ、バレイショ、野菜類、その他多くの植物の品種改良にも使用されている技術で、細胞の脱分化を活用したものになる。一度、葉や根などに分化した細胞が未分化の状態に戻ることを脱分化と呼ぶ。この脱分化の状態の細胞1個1個を培養し、そのなかから目指す特性を持ったものを選抜し、植物体を再生させる。KWSでは、試験対象の新規除草剤を使用しながら脱分化の細胞を培養し、約15億個の細胞のなかから除草剤抵抗性を持った1個の細胞を選抜することに成功した。
従来、広い殺草スペクトルを持つ除草剤と、その抵抗性を持った遺伝子組換え作物(GMO)はすでに存在する。しかし、GMOは、日本国内では、食品や飼料としての安全性や、カルタヘナ法に基づいた生物多様性への影響を考慮して「食品安全基本法」をはじめとする各種の法律で厳密に管理されており、北海道でも条例で規制されているため、実質的に国内では栽培が難しい状態にある。しかし、「KWS 8K879」はGMOではなく、上記の法や条例の適用対象外のため、国内で栽培しても法的問題は生じない。
幅広い雑草に効果のある除草剤に抵抗性を持つ作物が一般栽培されるようになれば、テンサイに限らず、日本初のことになる。

生産拡大と人手不足のなか、手取り除草から解放

この「KWS 8K879」の最大のメリットと考えられる点は、手取り除草の負担の大幅な削減が期待できることだ。広い殺草スペクトルを持つ新規除草剤と、その抵抗性を持つ「KWS 8K879」を組み合わせることによって、その効果が発揮される。
優良品種に登録されれば、画期的な除草作業体系が実現する事例になり、生産者が栽培する際には、手取り除草という過酷な労働から解放されることになる。
今回の育成の背景には昨今、日本でも直播による生産体系が拡大してきていることがある。直播は、移植に比べ除草剤を使用しても雑草に悩まされることが多い。直播テンサイでは手取り除草で対応することが多くなる。生産者にとっては重労働で大きな負担になっていた。
じつは、直播でも、従来の移植でも、北海道ではテンサイの除草の体系は確立している。一般的に、除草剤散布は2回行なう。1回目は5月下旬ごろ、2回目は6月下旬ごろで、各種の広葉雑草に効果の異なるフェンメディファム乳剤、レナシル・PAC乳剤、メタミトロン顆粒水和剤等を組み合わせて散布する。また、1回目散布の効果が切れてきたところで、カルチベーターで中耕・除草する。2回の除草剤散布とも、イネ科雑草に効果の高い除草剤を混ぜるケースが多い。

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