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過疎が進み、限界集落やら消滅可能性都市といわれても、農業が産業として可能性を見いだすことを否定されているわけではない。田舎の農村が廃れるのは、その中だけで考えて行動するからである。人材であれ、仕事であれ地域経済が限られるのであれば、外から持ってくる努力をしなければ突破口は開けない。どんな業種であっても、したたかな経営を目指すならば、技術を磨き、都会に出張して仕事を請け負ったり、大手の下請けに食い込んだり、地域内の仕事の需要だけに縛られてはいけない。農業といえども原則は同じだ。
日本の総人口の1割以上が東京に集中し、地方でも大都市に人口が集中する構図はこれからも変わらないだろう。地元の人口増が見込めないのであれば、社会貢献としての地産地消をしながらも、我われが考え方や見方を変えて農業生産以外の技術をも身に付けるほうが、地域を維持するためには得策である。理想論といわれそうだが、農業をはじめとする地方の産業の発展を考えるときには、積極的に都市圏や広くは海外に目を向けるべきである。生産技術が反収を高め、付加価値の高い農畜産物を生産できる時代なのだから。
今回は、特定農山村と都市に近い田舎を比べて暮らしやすさと農業適性について考えてみることにした。
農村社会を取り巻く環境は数字で捉える習慣を
かつては貧しさの象徴であった「農村」や「田舎」は、いまや都会の人から見れば、移住先として希望的な視線が送られることすらある。ただし、同じ田舎でもそのレベルには差がある。普及員として道内を飛び回っていたころに感じていたことだが、最近その認識はさらに強くなった。「とことん田舎」は国から特定農山村に指定されている。しかし、農村という言葉は非常に曖昧に使われていて、「そこそこの田舎」のことを指すことすらある。「とことん田舎」と「そこそこの田舎」では、暮らしも違えば、経営環境もまるで違う。
その違いを認識するためには数字で捉えるのが手っ取り早い。講演に呼ばれると、その地域に合った話をしたいとの思いから、市町村の統計データに目を通すのを習慣にしている。便利なことに各市町村や農協の指標も農業センサスなどの国の統計データもインターネットで簡単に調べられる時代である。総人口、面積、耕地面積、農業生産額、特産品の情報くらいは頭に叩き込むようにしている。ここでは少し視野を広げて、農村を取り巻く環境を表す数字の事例を図1に挙げてみた。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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