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特集

農業研修―企業が注目する人材育成効果

昨今、企業が人材育成の場として農業に注目している。従来のリラクゼーション効果を狙った収穫体験とは、一線を画すものだ。企業が農業研修に求めているものは何か。また、研修を受け入れている生産者にとってのメリットは何か。本特集では、契約栽培取引の関係にある青果物流通業と生産者、異業種の企業の研修の受け入れを事業化している生産者、現在受け入れ準備中の生産者に、取り組みの意義を聞いた。 (構成・文/平井ゆか)

Case1 異業種からの研修受け入れ 農業をツールとした 人材育成プログラムを提供

株式会社えと菜園(神奈川県藤沢市)

農作物だけでなくプログラムを売る――。(株)えと菜園は、2014年から人材教育の場として企業から注目され始めた。4月になると、製造業の上場企業や、製薬会社、IT企業などが、新人教育やリーダー育成教育のために社員を送り込んでくる。えと菜園にとって、企業の研修はいまや、農業と並んでひとつの事業になっている。代表取締役の小島希世子氏に、何が企業に響くのか、話を聞いた。


えと菜園は、神奈川県藤沢市で、自然栽培や無農薬有機栽培の野菜を生産、いわゆる都市農業を営んでいる。小島氏が家族とともにこの地に移り住み、夢だった農業を始めるため、えと菜園を立ち上げたのは2009年のことだ。それから4年後には、企業が農業の研修に訪れるようになった。

【農業で人が変わるということが注目される】

企業から声がかかるようになったきっかけは、小島氏が09年に立ち上げた「農スクール」の活動が認められたからである。「農スクール」は、ホームレスの人が農業を学ぶ場をつくり、人手不足で困っている農業者とマッチングするという社会復帰の支援をしてきた。
この活動に注目したのが、小杉俊哉氏という人物である。小杉氏は、マッキンゼー、アップルを経て、慶應義塾大学大学院理工学研究科の特任教授となり、数社の社外取締役や顧問を務めている。
小杉氏が注目したことにより、企業などから講演の依頼が来るようになった。14年、著書『ホームレス農業』(河出書房新社)を出版すると、さらに講演の数が増えていった。
やがて、講演を聴いた企業から、今度は農業現場に行きたいという声が挙がるようになる。企業に加え、人材育成プログラムを企業に提供しているコンサルティング会社からも声がかかるようになっていった。
「他業種の企業様から『農業で人が変わる』という点に着目していただき、活用していただけるということは、本当にありがたい話です」

【企業の要望に合わせたプログラムを提供する】

こうして始まった企業向けの研修は、現在、2つの形で提供している。ひとつは、企業に出向いて行なう講演で、もうひとつは、農業現場で行なう体験と座学である。
講演の場合は、自己啓発を目的としたものが多い。なぜ失敗を恐れずに飛び込むことができたのか、どうしたらチャレンジ精神を持てるのかといったものだ。

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