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特集

農業研修―企業が注目する人材育成効果


産地での研修は、代表取締役の松野貞文氏(60歳)の発案だ。松野氏は、会社は誰でも働ける場であり、社員が長所や得意なことを活かせることを大切にしている。社員は18歳から60代まで年齢・国籍・学歴問わず、留学生や日本在住の外国人、障がい者と多様だ。毎年、従業員から選抜されたメンバーが川上村で農業の研修を受けている。

【生産者と同じ作業を体験する】

まつのの農業研修は、レタス収穫のスタートから最盛期にかけての、6~7月に実施する。レタスは高温に弱いため、川上村では、陽が昇り気温が上昇する前、深夜2時ごろから9時にかけて収穫作業を行なう。収穫されたレタスは、真空予冷機で急速冷却した後、大型冷蔵庫で保冷され、冷蔵車で出荷される。片づけなどを含め、作業が終わるのは11時ごろである。
まつのの従業員も、川上村の生産者が作業を始めるのと同じ深夜2時ごろから参加する。
手袋と長靴、白いカッパを身に付け、畑に膝をついて黙々と作業する。慣れないため時間はかかるが、丁寧に扱う意味を体で覚えていく。
レタスの根元を小刀でカットし、外葉を剥ぎ取って、切り口を上にして圃場に置く。噴霧器で水をかけて泥や切り口から出るサポニンという液を洗い落としたら、12個ずつ箱詰めしていく。
この一連の作業を、生産者たちと隣合わせで手分けしながら繰り返す。作業の方法はもちろん、なぜ、外葉を剥がすのか、なぜ水をかけるのかといった理由も聞きながら作業する。
実際の作業は約1時間。農作業の実体験が研修プログラムのメインではあるが、1時間にとどめるのには理由がある。
「私たちは、農作業自体を身に付けるのではなく、体験を通じて、生産者の想いを知るということに重きを置いています。慣れない作業で疲れ切ってしまい、ただ疲れたという感想だけになってしまうのは避けたいと思っています」
1泊2日の研修プログラムは、レタス収穫のほかに、作業の前後に生産者の説明を聞いたり、市場や道の駅などを見学したり、サクランボ刈りなどのレクリエーションを入れたりしている。
また、代表取締役の松野氏の講話を聞いたり、直接会話したりする機会も盛り込まれている。
「研修では、農業のすべてを知ることはできません。でも、農業の本当の姿や苦労や楽しさを知りたいと思っています。生産者の方には、普段やっているとおりの姿、農業はそんなに簡単なものではないということを見せてほしいと思っています」

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