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特集

農業研修―企業が注目する人材育成効果



Case4 立ち上げ時の試行錯誤 「リアルな農業体験」をスタート 事業化の意図と今後の課題

西阪農園(大阪府貝塚市)

プログラムをつくっても企業側が受け入れるとは限らない――。西阪農園は、一般市民のボランティアの受け入れから始め、昨年の秋、企業の社員研修を受け入れる態勢を整えた。ひとつの野菜の播種から収穫まで「リアルな農業体験」というプログラムを提案している。しかし、企業側の要望との隔たりなどの課題を抱え、試行錯誤中だ。代表の西阪和正氏と、立案した水田達也氏に、この事業を始めた意図と、課題を解決するための計画を聞いた。


大阪府南西部(泉州地域)の貝塚市にある西阪農園は、住宅地と工場、農地が混在する場所にある。泉州地域では比較的経営規模が大きいほうで、軟弱野菜農家としてその名が知られている。
2015年に携帯電話会社から西阪農園に転職した水田氏は、代表の西阪氏の農作業を補佐しながら、広報・宣伝活動を担当することになった。さっそく始めたのが、農業ボランティアの受け入れだ。
「正直、人手不足の解消にもなるし、農園の宣伝にもつながると思いました」
農園内には、休憩や着替えをする場所やトイレも完備して、受け入れ態勢を整えた。現在、ひと月に1人か2人、多いときは3~4組が訪れる。主に大阪市街地に勤める女性たちや、履修単位にボランティアが組み込まれている大学の学生たちだ。期待どおり、作業が立て込んでいるときは戦力になっているという。

【「リアルな農業体験」でファンをつくる】

次に考えたのが、農業体験を売ってお金を稼ぐ事業である。コンサルティング会社に相談するうちに、企業研修という切り口は面白そうだという話になったのがきっかけだ。
その研修の特徴は「リアル」な農業体験である。「リアル」というのは、自分たちがやっている農作業と同じ作業をやってもらうという意味だ。ひとつの野菜の播種から収穫まで企業に委ね、できた野菜は社員に食べてもらう。
農業のヒーリング効果やエンターテイメントを目的とした観光農園とは一線を画す。
なぜ「リアル」なのか。その理由は、転職で農業を始めた水田氏だからこそ、農業が持つ、ある価値に気づいたからだ。
「農業は、ひとつの作業自体は単純作業が多い。でも、何のためにこの作業をするのかということを考えなければなりません。農業は、かかる時間がコストです。例えば収穫の際、いかに後の工程である袋詰め作業をやりやすい状態にしておくかということを考えながらやれば、出荷時の生産性が上がります。また、収穫と出荷は分担して行なうこともあるため、より能率性を高めるよう農園内でのコミュニケーションと連携も大事になってきます。企業向けのプログラムでは、研修一日の作業が農園の売上に相当する仕事ができるかどうかを、我々から与えるミッションにしています。そのことによって働いてお金を稼ぐということを可視化する目的もあります」

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