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【農業は先進国型産業になった!】
外国人実習生の現地ルポ 実態と課題と展望 第3回 全国一のイチゴ産地、実習生受け入れて生産維持 栃木県真岡市(旧二宮町)
- 評論家 叶芳和
- 第15回 2018年06月28日
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二宮町でも、技術力格差から、10a当たり単収は2tから10tまでの開きがある。イチゴの価格は1000円/kgであるから、粗収入でいうと、10a当たり200万円から1000万円までの格差だ。つまり、技術力トップの10a当たり粗収入は1000万円だ(普通は700万円)。
アスパラとイチゴは長年1000円/kgと変わらず、物価の優等生と言われているが、単収アップでコスト増を相殺してきたのだろう。
二宮町のイチゴ経営は1戸当たり70~80aで周辺地区の2倍の規模である(JAはが野平均は35a)。イチゴ管理は一人10aなので(家族3人ではMax45a)、50a以上の生産者はほとんど実習生がいる。高齢化、労力不足で、全国各地のイチゴ栽培は作付面積の減少、生産量の減少に見舞われているが、二宮町は規模が大きいので実習生を入れている。そのため、労力不足を免れ生産を維持、一方、全国の供給不足からくる単価アップの恩恵を受けて、販売金額が増大している。(注、それでも生産者は年10戸減っている。)
二宮町に在留する実習生は約200人とみられる。イチゴ生産者640戸のうち、実習生を入れている農家はJA部会37戸で実習生115人、これは「外国人技能実習生受入れ協議会」(事務局は農協に置いてある)から斡旋。このほか他の監理団体3社から受け入れている農家があり、総数200人と推定される。協議会の斡旋は約半数である。
(注)2015年農林業センサスによると、旧二宮町の農業経営体数は1055、うち常雇のある経営体は114、常雇人数は499人である。外国人実習生を200人とする
と、常雇人数に占める割合は4割である。
3)規模拡大と実習生 50aが階層分岐点
二宮町にはイチゴ作付面積1haを超える農家が6戸ある。その一人、イチゴ栽培50年の上野義近氏(真岡市大根田)を訪問した。作付面積115a、イチゴ農家としては大規模経営である。イチゴ販売高は約7500万円。
規模拡大の推移は、家族労働の時は50a(ただしパート2人)、10年前実習生を入れて100aに規模拡大した。労働力は家族3人、実習生4人(中国人、男2人、姉妹2人)、計7人である。10年前から実習生を受け入れており、すでに卒業生が10人以上いる。帰国者の中には、ここで稼いだカネで小麦の収穫機を購入し、農業に就いている人もいる(イチゴ栽培の人はいない)。今年9月帰国予定の人は3年間で400万円送金した。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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