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【農業は先進国型産業になった!】
外国人実習生の現地ルポ 実態と課題と展望 第3回 全国一のイチゴ産地、実習生受け入れて生産維持 栃木県真岡市(旧二宮町)
- 評論家 叶芳和
- 第15回 2018年06月28日
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イイヤマ農産は、家族労働の時は40aであったが、23年前、日系フィリピン人2人を雇用したのを契機に規模拡大に転じ(80a)、10年前外国人実習生を入れ110aになった。規模拡大は雇用労働依存である。現在、労働力は家族3人、外国人実習生6人(中国人)、日本人1人、計10人である。
実習生の賃金は、残業を月40時間にとどめれば、支給額は18万円である(栃木県の最低賃金は800円、残業手当1時間分は1000円、40時間残業すれば4万円)。「政府の言う通りにすれば、実習生は逃げ出す」という。実習生は残業をしたがる。「残業ありますか」。これが実習生に最初に聞かれたことという。残業が月80時間あると支給額22万円、これだと喜ぶ。20万円を超えると喜ぶ。90時間になれば大喜び。支給額23万円、手取り20万円になる。実習生は大喜び、経営者も喜ぶ。誰も文句はいわない。政府の監督官庁だけダメだという。
イチゴ栽培は季節性が大きい。夏場は仕事がない。「収穫期など、イチゴが多忙な時、臨時的に、80時間、90時間を認めてほしい」。イチゴ農家の共通な要望である。「年間所定労働時間2080時間、繁忙期は残業80時間」というようなルールを望んでいる。
季節性の大きい農業では、三六協定の締結を指導しながら、残業規制取締りの弾力化が必要なのではないか。
4)地域社会との共生 実習生版5Hクラブ
農場調査で思うことは、流通技術の重要性である。現地で食する完熟イチゴは実に美味しい。東京で流通しているイチゴは1月を除くとまったく「別の果物」である。美味しさの格差が大きい。完熟前に収穫するからだ。流通技術が良くなれば、イチゴの消費は大きく増えるのではないか。
実習生の実態に接して思うことは、「非融和性」である。うまく表現できないが、“孤立”あるいは“隔離”も感じる。今後、実習生はますます増えていくとみられるが、地域社会との共生が重要と思われる。しかし、現状は融和性は低い。中国の北京や上海で、農民戸籍の農民工と都市居民の間に壁があるようなものだ。今後、実習生の就労期間は5年間に延長される。10年への延長も検討されている。社会の安定性のため、共生の努力が望まれる。
日本の農村では、「4Hクラブ」や「青年団」が交流の機会を作ってきた。外国人実習生を含めた交流組織「実習生版5Hクラブ」(仮称)を創り、実習生と地域社会の共生の場を創ってはどうか。何か交流の仕組みが欲しい。地域社会にイノベーションを起こす「社会起業家」の出現を期待したい。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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