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輸出に力を入れている和牛はさすがに世界を意識しているためか、各地の銘柄牛が名を連ねている。知名度の高い特産品が漏れていたり、馴染みの薄い地域ブランドが登録されたりしているのは、地域の共有財産として保護する制度を利用するか否か、行政や関係機関の理解度やその産品を地域ブランドとして売り出す戦略が異なるためなのだろう。農林水産省の目論見としてはこの制度を導入することで、関係者の利益の保護と関連産業の発展、需要者の利益増大を図ることと説明されている。なかでも輸出促進策として語られることが多いようだ。
これまでの農業分野で産地を保護する制度は、農産物検査の観点で制度化されているコメ・麦・大豆の産地品種銘柄や野菜の安定的な需給調整を目的とした産地指定制度など、生産・流通側の事情に基づくものが大半だったように理解していた。それに対して、特産品をその土地の風土や歴史、文化に紐づけた知的財産として捉えようという制度を私は好意的に受け止めている。特産品になるまでの歴史的な経緯、あるいは名付け親やヒットするきっかけを楽しむのは大切なことである。
ちなみに地理的表示は日本独自の制度ではない。お手本のヨーロッパではガットウルグアイ交渉以降に地理的表示の制度が創設され、100カ国以上の国でそれぞれ原産地表示に関する法整備が進んでいる。グローバル化する食産業において、特産品の作り手の愛着や誇りを守るしくみはぜひ真似したい発想である。
今月は地域ブランドの特産品と農場独自のブランドを対比して、農村社会と経営の視点で考えてみたい。
特産品と地域経済の関係
北海道はよく食材の宝庫と言われるが、先の地理的表示に登録されているのは「夕張メロン」と「十勝川西長いも」の二つだけだ。開拓者による農業の歴史は浅く、概ね25年以上にわたって生産され続けていることを前提に特性を定義するのはハードルが高いのかもしれない。また、ジャガイモやタマネギ、スイートコーンなどは「北海道産」のブランドが浸透しているように感じるが、品種や栽培方法などその地域ならではの特性がなかったり、都道府県単位では適応範囲が広すぎたりして登録には至っていないのだろう。
世界的にも欧州からの移民が多い米国等ではヨーロッパの地名に由来する産品が多く製造されており、地理的表示を保護する動きは鈍いという。農産物に限っても地理的表示の登録はなくとも知名度の高い産品は日本中にあふれている。そこで今回は、地域ブランドを確立している産品をまとめて特産品として話を進めていこうと思う。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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