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手っ取り早い選択肢に、独自の農場ブランドを立ち上げる方法がある。せっかく経営者になったのだから、自分の経営者としての腕を試し、達成感のある仕事を完結したいと思うなら、それも農業の醍醐味である。
ここでいう農場ブランドは、地域ブランドに対比する意味で使っている。農場単体でブランド化までできる場合もあれば、加工業者や販売業者と手を組んで商品化にこぎ着ける場合もある。ただし、小麦は乾燥調製・製粉工程なくして商品にならないし、畜肉は食肉加工が必要だ。酪農でも生乳はそのままでは出荷できない。通常は共同作業で安全性と品質を担保しているので、リスクを分担できる協力者を見つけて、自前での設備投資が過剰にならないように注意したい。
農業経営者の考え方次第でブランド化の形もさまざまに展開できるのが最大の特徴である。一つ目の手法は、生産工程にこだわりを持ち、それが価値になって商品力につながるケースである。二つ目は、商品に際立った特徴があり、市場流通では出回らない希少価値が完成しているケース。そして、三つ目が作り手のキャラクターに特徴があるケースだ。誰がつくっているのかだけでお客さんを惹きつける才能があるのは羨ましく思う。
私もかくいう挑戦者の1人で、「和牛が育てる美味しいアスパラ」の愛称で、直販とスーパーとのタイアップの二本柱で農場ブランドを展開している。アスパラは有機質を多く要求する作物で、その特性に応えて肥料を与えようとすると肥料代が馬鹿にならない。和牛の堆肥は上質で両部門にとって都合の良い関係を構築できたと自負している。農場の立地が良いので、あの手この手を駆使してPRを進めている。
しかしながら、経営者として行動を起こしてみると、生産活動以外の仕事に多くの時間と費用も割かれているのも事実である。現場を離れることが増えて、雇用は欠かせなくなった。また、地元のJAのアスパラ生産部会で役員も引き受けているので、JAへの出荷量を減らした分だけ肩身は狭くなった。それを除けば、農場ブランドへの挑戦によって、日々が充実したように思う。
メリットは、農産物に商品力をつけて、販売展開する手法を身につければ、経営の発展目標が明快になり、張り切って仕事ができることに尽きる。経済行動が活発になり、人や資金が相互に動くのだから、結果的には農村の活性化に一役買うことになる。もし、農場が提供した原料を地元の食品メーカーやほかの産業と組んでブランド化に成功すれば、田舎発信の商品が市場に広がり、地域おこしにもなるだろう。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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