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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

米国(2) 産業用の幅を広げるCBD ビジネス

CBD(カンナビジオール)製品は、2016年の売上高では19%のシェアを持ち、米国の産業用ヘンプ市場で急成長している注目分野である。CBDは大麻草の化学成分(カンナビノイド)の一つで、マリファナ成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)濃度が0・3%未満の繊維型品種に含まれる薬効成分として、医療分野、健康分野での利用が広がっている。
古今東西で古くから薬草として使われてきた大麻草だが、世界的に大麻草が麻薬規制の対象に置かれているため、その薬効成分の研究開発は歴史が浅い。CBD製品は産業用ヘンプに分類されているが、「医療用大麻」とも関連が深いので、合わせてその歴史を辿ってみよう。

人道的利用に活路を見いだした医療用大麻

1830年代の西洋社会に大麻草を薬草として広く紹介したのは、アイルランド人でインドのカルカッタ医科大学にいたオショーネシー博士である。医薬品の公定書である米国薬局方には1850年に収載され、適用疾患に神経痛や破傷風、チフス、コレラ、狂犬病、赤痢、アルコール中毒、アヘン中毒、炭疽菌、ハンセン病、失禁、毒ヘビの傷、痛風、痙攣性疾患、扁桃炎、過度月経出血、子宮出血などがあった。当時は薬局や食料店で購入可能な民間薬として28種類が販売され、今では抗精神病薬で有名なイーライリリー社もチンキ剤を製造販売していた(図1)。
しかし、ケシ植物由来のアヘン剤が登場すると、状況は一変する。水に溶けないために皮下注射で使えない、薬効が一定でない等の理由で使われなくなっていった。追い打ちをかけるように、1937年に米国でマリファナ課税法が採択され、41年には米国薬局方から削除され、50年には著名な家庭医学書メルクマニュアルからも削除された。最終的に70年の連邦法で大麻草はスケジュールの「最も危険性が高くて医療用途なし」が適用された。
こうして世の中から排除された医療用大麻に希望を与えたのは、欧米のコンパッショネート・ユース(人道的使用)という制度だ。生命に関わる疾患や身体障害を引き起こす恐れのある疾患を抱える患者に対し、代替療法がない等の限定的状況において未承認薬の使用を認めるものである。医療用大麻での適応は、76年に緑内障を患っていたボブ・ランドル氏が大麻栽培の罪で逮捕されたものの裁判で勝訴し、全米で14名の人道的使用が認められた件に始まる。

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