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【土門「辛」聞】
イタリア紀行 ヨーロッパ米と日本米
- 土門剛
- 第166回 2018年06月28日
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ヨーロッパの和食普及の「生き字引」
森本さんのことを知ったのは、昨年春に訪れたパリ市内のアジア食品店「エース」でだった。お米の販売コーナーで目立ったのがイタリア産の短粒種米。コーナーのど真ん中で平積みになっていた。日本産、カリフォルニア産、韓国産を押しやって一番の売れ筋商品ということがよく分かった。日本にはないキュービック(立方体)のパッケージの斬新さも目を惹いた。
これは誰か日本人の仕掛け人がいると思い、パリから帰国してすぐにグーグルで検索したところ、ようやく森本さんの名前にたどり着いた印象が残っている。ただ分かったのは、北イタリア・ミラノ近郊アルボネーゼという町で「ITALPO」という会社を経営していることだけだった。
イタリアに出向く前、森本さんについてリサーチをかけてみた。コメ関係の友人や知人(約20人)にチェックを入れてみたが、森本さんのことを知っていたのは、コメの輸出に携わっている方ただ1人のみ。その方が送ってきた「森本情報」を読んで、森本さんの仕事ぶりを初めてつかむことができた。
「コメ輸出、それもヨーロッパ方面に売り込もうとしている関係者で、森本さんの名前を知らないというのはモグリです。寿司ブームが起きるずっと前から、ヨーロッパでコメを商っておられた。当時は、キッコーマン系列のJFCジャパン(東京)の動きだけがよく知られていたが、10年ぐらい前から森本さんの動きが注目の的でした。森本さんは、イタリアの農業試験場が育種した短粒種から寿司向けの品種を選び出し、北イタリアの生産者に作ってもらい、それをヨーロッパ中の寿司店や和食レストランなどへ熱心に売り込んでおられるようですよ。コメ輸出関係者では、ヨーロッパにおける寿司ブームの生き字引のような方という評価があります」
ヨーロッパの短粒種米マーケット
ここでヨーロッパの短粒種米マーケットを説明しておこう。最初、ヨーロッパ市場に短粒種米を売り込んだのはJFCジャパンだった。そこへスペインのバレンシア産が参入してきた。オレンジで有名なバレンシアのことだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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