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特集

日本の農業に欠かせない3つの発想



発想1 エクステンションセンター 地域の農業と食品産業を支えるセンターの大きな役割

松延 洋平 コーネル大学終身評議員、首都大学東京客員教授

地域の住民・農家・企業とともに研究と普及を進めるエクステンションセンター。我が国では縦割り行政ごとの機関はあるものの、効果的とは言えないのが現状だ。大学で行なわれているのはオープンカレッジくらいのもの。そこで国際食問題アナリストでもある松延洋平氏から、米国コーネル大学の取り組みを中心に寄稿していただいた。欧米の農業関連研究機関の在り方から、日本の農業と農村を照射する。(編集部)

はじめに
欧米はじめ先進諸国はいずれの国もかつてない社会・経済・政治ともども大変動の渦中に巻き込まれ、広がる経済格差、止めようもない国際紛争で、伝統を誇る民主主義体制すらが厳しい試練にさらされている。
科学技術はその著しい進歩の成果、功績、メリットの華やかさをほこるものの、暫くしてそれのすマイナスの面が表面化してくる。先端産業科学技術は従来のセクターに横断的な衝撃を齎し、特に生命工学先端分野では想像を超えるインパクトが生じつつある。
折から、国際政治経済の激しさが高まるなかで我が国ではTPPや欧州経済協定などの発効から農業の競争力問題が浮かび上がる。農業者のみならず経済団体、消費者、市民などにいたるまで世界産業構造の変化、安全保障問題、生活の不安定化を強く意識せざるを得ない。
先進国の農と食の環境は、生産物の貿易拡大と価格競争とを主役とする規模の論理を基盤とする。地球温暖化現象は、特に短期的な急激な気候変動を伴うものであり、予測を超えた速度で生産環境を破壊する。これらが複合して農と食の在り方に抜本的な見直しを迫っている。
大量の人口移動、少子高齢化、新興感染症、都市・農村共同体の崩壊、労働形態の多様化等々毎日の報道は賑やかである。
我が国は今までは比較的に安全な環境に恵まれたため、戦後の厳しい世界の変動に無関心を続けて積極的な対応を行なっていない。しかし、海外からは、そのままでは我が国の安全保障が保たれるにはあまりにも深刻な弱点を抱え内包しているものと指摘されている。その例として、低い経済効率と弱体の組織集団の運営改革、労働資源人的不足である。低いままで低迷する食糧自給率、イノベーション力の欠落、遅々として進まない大学教育改革、等々が内外から指摘されている。

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