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特集

日本の農業に欠かせない3つの発想


まず食と農の最も中核的な戦略拠点であるエクステンションセンター構造が欧米ではどのように展開してきたかを説明し、その比較の上で我が国の大学の役割を論ぜよという命題を筆者はいただいている。本稿は、できるだけその要請に従う形で進めたい。

【研究・教育・普及――欧米大学の歴史と活動の姿】

米国の大学の誕生と進化
長い歴史を持つ英国とドイツの大学制度に対して、19世紀には後進米国でも教養や科学のエリート教育の場として讃仰(偉人の教えを仰ぎ尊ぶ)の機運が強まった。しかしそれは国立大学の形とはならず東部の名門私学の設立に終わっている。
英国、フランスと特にドイツの大学の制度が米国の大学制度誕生当初は強く影響していた。しかし、社会の変化が激しくニーズの多様化する産業経済社会の要請が、米国では大学が象牙の塔に閉じこもることを許さず、なんでも学・科学の対象に取り入れ、雑種な文化と新しい学の体系が作り上げられるようになり、次第に別の体制へと分化していった。さらにこの傾向は大学院にも及び、専門職業大学院の誕生と隆盛はその対応の一つの進化形である。
そのなかでもさらにユニークな形となっているのがコーネル(CORNELL)大学である。

コーネル大学のユニークさ
東部私立名門校の一つコーネル大学は、かって旧制高校のモデル基盤となっていた文系・理系融合のリべラルアーツ教育を重視する。一方で情報/宇宙物理、生物科学など超一流の理工学分野の基礎理論分野、さらに建築・機械工学など応用分野、さらに経営学MBA・法科大学院・ホテルスクールなど専門職業大学院教育などは私学分野として東部名門アイビーリーグの位置を誇る。
今や国家間の対立も激しくなり、産業の国際競争も厳しくなる一方である。科学技術分野での競争激化の影響は産官と大学間で、さらに大学内でも価値多様化の進展を反映して、対立と、一方学際協力・協調の姿は激しさを増していく。コーネル大学では国際的な名の通った学者でもありながら、大企業寄りと批判されがちな人物もありながら反モンサントなどを声高く主張を貫く著名な学者も少なくない。大都市から離れたキャンパス空間では、いやがおうでも濃密に対立する見解の交流をせざるを得ない。

【食と農分野に見る大学と大学院のパワー】

州立大学の経営を私学に委託
このような質の高い、自由度の高い強力な経営力を持つ私学に、NY州政府は自治体である州立大学分野の経営を委託している例は米国でも他には存在しないのである。これらの役割は、研究の機能以上の重要性をもつ場面もあり、従って研究と対等な立場の職責と位置づけられている。分野によるが国際的な活動を活発に展開している普及担当教授も生まれている。そこに加えて食・農そして栄養・家政・労働分野をも州立として併存させている。

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