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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

米国(3) グリーンラッシュに沸くカンナビス産業


なお、嗜好用は州法によって税率が異なるものの販売価格の10~37%がお酒やタバコと同じように課税対象である。18年に嗜好用を合法化したカリフォルニア州では、年間約1000億円の税収が見込まれている。

高くても買う顧客が技術革新を促す

産業用ヘンプから少し話は逸れるが、医療用や嗜好用品種はおもに植物工場で栽培されている。一定の薬理成分を確保するためにクローン苗で増殖させ、1年に5回の作付けが可能だ。1平方m当たり4株移植して、薬理成分を有する花の収量が500gとすると、40フィートコンテナ(30平方m)の1作当たりの収量は1.5kgになる。栽培農家の販売価格は花1g当たり500円なので、1つのコンテナの1作当たりの売上高は750万円、年間5作で3750万円にもなる。カリフォルニア州では栽培規模別に異なる免許料金が課せられているが、46平方m未満、~464平方m未満、~929平方m未満、~2043平方m未満、2043平方m以上の5段階のうち前述の30平方m栽培の事例は最も小さいサイズに該当する。
いまや栽培技術が確立され、大麻草は合法・違法という法律の壁を除けば、植物工場に適した超高付加価値な農作物になっている。「高くても必ず買う」という医療用に使う患者と、嗜好用で大人の遊びとして楽しみたい個人によって成り立つ商売なのだ。興味深いのは、この高くても買う顧客に支えられた豊富な資金力により農業技術(AgTech)部門の進展が著しいことである。植物工場で年間10作の栽培技術を確立した企業もあり、激化する競争に打ち勝つためのより効率的で、より高収量で、より低コストな栽培技術が引き続き求められている。

犯罪の抑止は全面禁止より厳格な合法規制が効果的

ここまで収益性が高くなると、課題は違法栽培や不正流通をいかに防止できるかという点に集約される。無線技術の一種であるRFIDタグを使った大麻草追跡システム(CTS)により、大麻草は株ごとに1本1本監視されている。食品安全分野のトレーサビリティと同じで、栽培や加工に従事する従業員もこのシステムに登録されている。このシステムにより、製品を手にした患者はWEBサイトから、いつどこで誰がどの品種を栽培して収穫したかといった情報を得ることができる。
医療用での6株程度の個人栽培は州制度においてCTSの対象外だが、嗜好用はすべてCTSの監視下にある。また、仮想通貨で話題になったブロックチェーン技術を使った追跡システムの開発や、患者に適した品種を選択するために人工知能(AI)を使った学習によって最適な回答を得る仕組みなども開発されており、いまある先端技術が惜しみなく注ぎ込まれている。

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