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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

農業機械のコストの話(1)5つの異なる所有方法

農機メーカーが揃って嘆くいまどきの人材不足

去る7月12日より5日間にわたって帯広で国際農業機械展が開催された。今年は初めて北海道土を考える会が出展した「土カフェ」をお手伝いしていたのだが、その最中にも読者の皆さんをはじめ、全国から多くの方が訪ねてくれたおかげで話に花が咲いたように思う。悪天候で牧草の収穫が進まず、思い切って会場に4日間も滞在することにしたのが功を奏し、時間を見つけては農機を眺めることができた。
前回の4年前に比べて、メーカーの各ブースでは見知った顔の営業マンが出迎えてくれたので、立ち止まってはオススメの商品の説明を受けつつも、今後の農機の開発や販売展開の方向性など情報交換をさせてもらった。考えてみると、これまでお世話になった年配の方々はほとんどが引退されて、応援半分冷やかし半分で会場に遊びに来られていた。そして、現場で一緒に汗を流した開発設計やソリューション部署、営業の面々は、出世して立場が変わっている。立ち話の話題も世界の農業情勢など多岐に渡り、農機業界が抱える課題にまで広がった。そのときの話を少しまとめてみよう。
まず、今回の開催テーマはICT関連の機器だったはずだが、とくに目に留まった物がなかった。私が丁寧に情報収集して回ったのは、各社が扱うプラウなどの土耕機である。その理由は、ハイテクな精密機器が農業生産に欠かせなくなった反面、耕す面積が増えた経営者は、土耕機に対して、耕しやすさに代表される操作性や耐久性、最小限のメンテナンスで使い続けられる強靭性をより強く求めるようになったからである。土に、あるいは作物に直接触れるものこそ良品でないといけないのだ。単純に輸入機であれば丈夫で長持ちすると考えがちだが、値段が張るので、その強みがなければ導入する意味がないと言いたくなる。
次に気になったのは、どのメーカーも人材不足だと騒いでいることである。ひと昔前の人材不足は優秀な人間が少ないことを指したが、いまは根本的に絶対数が足りないというのだ。あるトラクターメーカーでは、就労条件を整えて募集しても新卒者の応募が募集人員の半分にも満たなかったと幹部がこぼしていた。加えて、入社後何年も経たずに会社を辞めてしまう人も多いという。「最近の若者は……」という嘆きはいつの時代にもあることだが、その理由は変化しているようだ。
人材が不足している原因の一つ目は、我が国全体を見ても経済規模に見合う労働者数が農業に限らず不足していることにある。産業界が外国人労働者の力を借りるようになって20年は過ぎただろう。花嫁問題の解消に端を発し、いまでは野菜を手がける大規模な経営を中心にアジア圏の労働者らが研修制度を利用して活躍している。経営を維持するためには海外からの労働に頼るというのも当然の選択肢であろう。
ただ、農機メーカーの人材不足は、この傾向だけでは説明できないという。あるメーカーのベテラン営業マンによれば、繁忙期には労働時間外・休日のない働き方に原因があるそうだ。加えて何かと汚れる仕事であることも影響しているのだと。たとえば、牛の糞を掃除するバーンクリーナーのメーカーの場合、客先でメンテナンスや修理の対応をすれば、少なからず糞だらけになる。新人教育を兼ねて修理のために納入先の牧場を訪れた後、まもなく辞めてしまった新人の退職理由は、作業終了時刻が遅くなったことと、糞の汚れに耐えられなかったことだったという。なんとも寂しい話題である。

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