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法人化したことで、会社の所得は過去の農業所得より増えているのも事実で、暮らしが豊かになったことは確かだ。この特徴は我が家に限らず、最近の農業経営に共通する傾向だが、所得率低下の一番の要因は、農業機械のコストに占める割合が増えていることに、ほかならない。というのも、現代の農業機械のコストは、労働問題そのものだからだ。働く人が多くいて、彼らが報酬を貰える状態を保てるなら、働く人は多いほうが経営環境は良くなる。オペレーターの人数が揃うなら、まあまあの馬力のトラクターを台数揃えて作業をすればよいのである。
逆に、トラクターの大型化を図ったり、作業機の作業幅を広くしたり、自動操舵などの作業性を向上する機器が必要になったりするのは、間違いなく労働者が不足していることを指している。より良い機械が必要であることも一方では事実だが、いくら規模拡大が青天井でも、人手不足解消のために闇雲に機械投資を続けるのはお勧めしない。とくに注意が必要なのは、穀類で規模拡大を進めている経営である。集落営農で設立した法人で、機械力に作業を頼った結果、後継者となる子弟を養えない事態に陥った話を聞いたことがある。野菜との複合経営に移行することで経営改善を図り、次の代にバトンを渡せる状況になったそうだが、この事例から経営面積と人手、機械装備は上手にバランスを取って投資と回収をしなければならないという教訓を得ることができよう。
所有方法で大きく異なる機械のスペックと予算額
農業機械のコストについて考える切り口の一つに、所有方法の違いがある。年間稼働時間と作業面積、あるいは誰が乗るのかによって、機械に求めるスペックも、調達するべき予算額も変わってくる。機械の購入に合わせて、新しい組織を立ち上げることもあるほど、大型の機械になれば、投資額も大きくなる。そこで、所有方法を5つに分類してその特徴を整理していこう(表1)。
一つ目は、経営ごとに所有する方法である。世の中に登場したばかりで誰もが買えなかった頃を除けば、ロータリーが標準装備されたトラクターや田植機、自脱形コンバインなどの多くの農業機械がこの所有方法で普及したはずである。個人経営であれ、法人経営であれ、想定されるオペレーターは経営者本人とその家族、あるいは従業員で、年間稼働面積は数十haから200ha程度であろう。
天候に合わせて使いたい時間に使えることと、機械選定に好みやこだわりを反映できるのが最大の強みだ。トラクターなど汎用性が高く、年間稼働時間の長い機械は、利用調整に割く時間と手間がかからないので、経営ごとに所有するのが無難である。一方、品目や用途が限定される機械で高額なものは、無理を押して投資しても資金繰りを即時に悪化させる要因になる。いずれにしても予算額は経営規模に依存するので、経営者の手腕が問われるところだ。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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