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米穀データバンク作況指数で産地別でのハイスコアは「103」だった(宮城、福島、群馬、千葉、石川、福井)。各産地から一様に聞こえてくるのは、「稲姿から判断して100に近い作況には違いないが、103はあり得ない」(福井県越前市の篤農家)という声だった。その根拠に示したのが高温による肥料切れの現象だった。
気象庁の気象データで裏付けてみよう。福井県越前市は、7月の平均気温が「日平均」26.5度、平年値より2.5度も高かった。「日最高」32.1度は、平年値より2・9度も高い。「日照時間」は201時間、これは平年値より7割も長い。いずれも過去10年間で最高だった。
注目すべきは「日最高」35度以上が3日も連続して続いたことだ。夜温も1.9度高く、穂肥が溶け出ていったことが容易に想像できる。肥料切れを起こしやすい気象条件が揃っていた。作況推計プログラムは、そういう気象変化を取り込んでいるのだろうか。
米穀データバンクの作況指数について笑えぬエピソードを紹介しておこう。全国作況指数「102」を公表したとたん、その情報が産地を駆けめぐった。コメの買い手は、「ことしは豊作でコメが余る。値段が下がる前に早く出した方がよい」と農家に安値で出荷するよう促している。もちろんその後米価が上昇することを見込んでのことだ。
逆のケースもある。17年産のことだった。全国作況指数「102」を真に受け、豊作になるものと思い込み、仕入れを手控えた集荷業者や卸業者が相次いだ。いざ集荷シーズンになると、作況指数ほどにコメが穫れていなかったことが分かり、慌てて集荷に走り回り、最後は高値での仕入れに追い込まれた。集荷業者や卸業者の動きから、実際の収穫量は、作況指数ベースで「98」程度と推測する。
「葉色の変化」が盛り込まれず
8月末になると、農水省統計部による8月15日時点での作柄概況の公表がある。東日本とした主産地の早場地帯(19道県)を対象にしたもので、西日本の西南暖地の4県を対象にした作柄概況は7月15日の公表だ。作柄の良否は、「良」(106以上)、「やや良」(105~102)、「平年並み」(101~99)、「やや不良」(98~95)」、「不良」(94以下)の5段階表示だ。競馬なら5頭立てで4頭ぐらいの単勝馬券を買うようなものか。予測とは言い難い代物だ。作況指数での公表は9月15日時点の調査からとなる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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