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土門「辛」聞

なぜ水稲作況調査は実態からかけ離れているのか


統計部による作況調査についても、12年12月号で次のように指摘しておいた。
「統計部は、無作為抽出と説明するが、実態は栽培技術のしっかりした篤農家を中心にした調査であろう。これだと数字は必ず高めに出てくるものである」
調査に当たるのは約1000人。地方農政局職員が700人、専門調査員300人という内訳だ。後者は、公募によって選ばれた自治体や農協など農業団体職員OB。もちろんボランティアではない。報酬が出る臨時の仕事だ。専門調査員制度は15年から始まった。もともと地方農政局が担当していたが、職員削減のあおりで専門調査員がその役割を担うようになってきた。
先の記事については、意図して「篤農家」の圃場に的を絞った調査ではなく、最初に無作為抽出で選んだ圃場で所有者の農家が不在か調査の協力を断られた場合、その代替圃場の選定に作為が働く余地があると訂正しておこう。補足すれば、調査員の能力というか観察力の問題もある。
そんなことより統計部のズサンな調査設計のことも強調しておきたい。調査員が田んぼに入って調査するのは、穂数、1穂当たりもみ数、全もみ数、登熟の状況などだ。この中に肥料切れを示す葉色の変化が調査対象に含まれていないことは、東北農政局が公表した「水稲調査の仕組み」の中の記述から分かった。
8月15日時点での作況調査で肥料切れを見つけるとしたら、葉色の変化を注意深く観察するしかない。統計部は作況調査をテーマに「水稲の作柄に関する委員会」を設置している。そこで葉色の変化が議論されたことがあった。一発肥料の問題が議論された09年3月の第5回委員会だった。
「どうしても省力化のため一発肥料が増えてきますよね。そういう問題が出てくるので、統計としては非常に難しいですよね。統計の前提というのは、最大限善良な管理をすることになっているわけですから、葉色があせてきても肥料はやらないというのだと、予測するのはなかなか難しいね」
この発言の主は畑中考晴氏。農水省の技官OBだ。プロの立場から、「葉色の変化」こそ、作況調査で最大のポイントであると指摘したものである。後段は、一発肥料普及による作況調査に疑問を呈したものだ。
それ以降の委員会の議事録をチェックしてみたが、このことが話題になったことはない。統計部は委員会で問題提起もしなかった。統計部が組織ぐるみで議論を封印してしまったように受け取れる。この問題に深入りすると、一発肥料の問題点が次々と明らかになり、生産現場に大混乱を引き起こし、収拾がつかなくなることを恐れたみたいだ。

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