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【農業は先進国型産業になった!】
外国人実習生の現地ルポ 実態と課題と展望 第6回 先進農業地帯の実習生は明るく日本語上手だった
- 評論家 叶芳和
- 第18回 2018年09月28日
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1 全国1位の農業産出額
田原市の農業産出額は853億円、市町村別ランキング第1位である(2016年)。1997年に新潟市を抜いて以来20年間にわたって第1位が続いている(現在の市域による比較)。渥美半島はかつては干ばつ常襲で農業困難地域であったが、68年の豊川用水の完成で水の安定供給が可能となり、農業は大きく発展し、全国有数の農業地帯になった。
現在、主な作目は菊、バラ、カーネーションなどの花き(311億円)、キャベツ、レタス、ブロッコリーなどの野菜類(300億円)、畜産(特に養豚、酪農)である。花き園芸の特化係数が9.52と著しく高いのが特徴だ。
筆者がまだ若い頃、渥美半島といえば、遠い南方に思いを馳せる伊良湖岬(島崎藤村『椰子の実』)、そして農業は「電照菊」であった。
80年代、90年代の花き園芸の成長は凄まじかった(図1参照)。当時、野菜、畜産がすでに盛んであったにもかかわらず、渥美半島のイメージは花き園芸の地帯であった。あとで、キャベツもある、養豚、酪農もあると知ったくらいである。電照菊の凄まじい伸びがそうさせたのであろう。夜間照明による出荷時期の調整、二度切り栽培、夏でも咲く新品種の開発などで、菊の周年出荷が可能になったイノベーションが背景だ。
図1は、田原市農業を作目別に推移を見たものである。80年代までは、野菜や畜産のほうが多かった。しかし、90年代には花きが主品目になった。花きの出荷額は80年90億円、90年239億円、98年409億円と倍々ゲームで高成長し、農業生産の半分を占めた。
しかし、花き園芸のピークは98年である。その後、次第に生産が後退し始めた。一番大きな要因は“輸入”だ。現在、スプレー菊は国内需要の5割が輸入、カーネーションは
7割、バラは3割が輸入である。輸入品との競争に押されているのである。生鮮食料のケースよりも厳しい事態だが、花屋さんの店頭では「原産地表示」が不要というのも一因であろう。もうひとつ、葬儀の祭壇に洋花が使われるようになったのも要因であろう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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