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「JA全農あきたは11日、各JAに支払う2018年産米の『JA概算金』を決定した。あきたこまち1等米(60キロ)は前年比800円増の1万3100円。各JAの販売手数料を差し引いた農家への実質的な仮渡し金『生産者概算金』は、おおむね1万2600円前後になるとみられる」
「前年比800円増」というのは、農協離れを防ぐために、あえて高目のボールを投げてきたようなものである。
JA概算金は、全農県本部が農協に示し、生産者概算金は、農協がコメを出荷した農家に払うものである。後者は、前者を目安にして各農協がそれぞれ経営体力に応じて出してくることが通例。実際には、JA概算金より100円から200円高く出てくるのだ。
ちなみに概算金が二本立てになったのは15年産から。その前年、公正取引委員会から、全農が示す県内一本の概算金が、独占禁止法が禁じた「不当な取引制限」に該当すると指摘を受け、農協ごとに概算金を出すようになったのだ。生産者概算金は、農家が農協にコメを出荷して等級検査を受け、等級が決まった時点で支払われる。その額は、年によって違うが、最近は最終精算額の9割程度というのが一般的。
記事の内容を整理しておこう。気になるのは、JA概算金について「1万3100円」としながら、生産者概算金について、それを下回る「おおむね1万2600円前後」と書いている点。その差は500円もある。先に説明したように、生産者概算金が500円もJA概算金より下回るのは、異例というか、極めて異常事態だ。
500円を差し引く理由は、「各JAの販売手数料を差し引いた農家への実質的な仮渡し金」ということらしい。販売手数料は、精算の時点で差し引かれると思っていたら、概算金支払いの時点で差し引かれるみたいだ。
この記事は、JA全農あきたが記者にレクチャーしたものを忠実に書いたと思われる。根拠は、記事ではJA全農あきたが主語になっているからだ。なぜこんな説明をしたか。その裏事情を考えてみよう。
「終わりの始まり」が始まった
それを読み解くヒントは、4月25日付けの秋田さきがけ新報の、「赤字補填で農家の負担検討、JAおばこ1俵300~500円」と題した記事にある。この記事は、総代会の2カ月ほど前に出されたもので、読みどころは、農家に穴埋めさせる具体的方法について触れている点である。6月の総代会で決定した損失分担の方法を具体的に示している。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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